カスハラ 2021.11.18

【保存版】カスタマーハラスメント対策への7ステップ【法的知識が重要】

「カスタマーハラスメントへの対応に苦労している」
「カスハラ対策の具体的なマニュアルが欲しい」
「自社へのカスハラに対して法的に対策できるか」

カスタマーハラスメントといえど顧客に対して強い対応はできない、と弱気になっているのではないでしょうか。しかし、カスタマーハラスメントの多くは不法行為であり、法的対策も可能です。

この記事では、

  • 不法行為となるカスタマーハラスメントの事例
  • 具体的なカスタマーハラスメント対策
  • カスタマーハラスメントに対する厚生労働省の状況

をご紹介します。カスタマーハラスメント対策をその場しのぎで繰り返していると、従業員の健康被害ばかりか企業のイメージダウンといった問題に発展してしまう可能性もあります。

カスタマーハラスメントに対する法的対策の取り方について詳しく紹介していますので、ぜひ最後までお読みください。

カスタマーハラスメントは犯罪行為として対策できるのか

カスタマーハラスメントは犯罪行為として対策できるのか

カスタマーハラスメントとは、不当な理由により理不尽な請求や暴言などを行うことです。暴行や恐喝など刑法上の不法行為にあたるケースが多いため、犯罪行為として対策することも可能です。

ただし、すべてのカスタマーハラスメントを犯罪行為として罰する事は難しい上に、あまりに強く対応していると企業の評判低下にも繋がります。そのため、法律的に対処したい場合は専門家に相談の上、慎重に検討しましょう。

ここでは、不法行為となるカスタマーハラスメントの事例と、刑法による罪状について紹介します。

1. カスタマーハラスメントの事例

カスタマーハラスメント実態調査を行っている株式会社エス・ピー・ネットワークが発表した「カスタマーハラスメント実態調査(2021年)」には、カスハラについて4種類に分けられています。

  1. 顧客としての立場を濫用する
  2. 不当・過剰・法外な要求や対応の強要
  3. 職務妨害行為
  4. 担当者の尊厳を傷つける行為

それぞれの具体的事例は以下の通りです。

  1. 時計の修理受付に納得いかず、4日間深夜まで謝罪させられた
  2. 10年以上前の商品注文の不備に対する慰謝料と新たな商品の要求
  3. 先方自宅に拘束され、連日の電話、誠意の提示など仕事に支障をきたした
  4. 問い合わせに即答できないと怒鳴りつけ「お前はバカだと!」と何度も言われた

他の具体的な事例を知りたい場合は、こちらの「【21年11月最新】企業に損害を与えるカスハラ事例4選【対応策を紹介】」をご覧ください。

このように悪質なカスタマーハラスメントは不法行為として認識されており、刑法上の犯罪に当てはまります。

2. 不法行為となりうるカスタマーハラスメント

上記のカスタマーハラスメントのうち、刑法上の犯罪となりうる不法行為は以下の通りです。

  • 脅迫罪(従業員を脅して恐怖を与える)
  • 強要罪(従業員を脅して金品を要求する)
  • 恐喝罪(脅迫により土下座や謝罪文など義務のないことを強要する)
  • 威力業務妨害罪(店内で騒いだり迷惑をかける)
  • 不退去罪(不当に長時間店内に居座る)

上記のような不法行為に当てはまるのであれば、訴訟などが可能です。例えば、自治体職員に対して暴力や悪質な要求をした住民に対して賠償請求を認めたという勝訴判決があります。詳しくはこちらの記事「【判例あり】カスタマーハラスメントで裁判できるのか?該当する違法行為を5つ紹介」をご覧ください。

このような悪質なカスタマーハラスメントに対しては、法律の専門家と話し合って法的対処を考えましょう。

カスタマーハラスメント対策への7ステップ

カスタマーハラスメント対策へのステップ

カスタマーハラスメント対策には、以下の7つのステップが有効です。

  1. カスタマーハラスメント対応の統一見解をつくる
  2. 一般クレームとの違いを社内で明確化する
  3. 対策マニュアルを作成する
  4. 実際の対応フローを決める
  5. 研修を行う
  6. 従業員の相談窓口を設置する
  7. 法律の専門機関と協力する

やることが多いと感じられるかもしれませんが、一度準備しておけば多くのケース対応できるため、対応時間や従業員への被害も減らせます。費用対効果の面を考えても、早急に対策することがおすすめです。

カスタマーハラスメント対応で何より大事なことは、組織的に対応することと、クレーム対応のプロセスを従業員が意識することです。そのため、対応プロセスを明確にして全員で共有し、決して一人が犠牲にならないよう充分な配慮が必要です。それでは、1つずつ詳しく解説していきます。

1. 会社としてカスタマーハラスメント対応の統一見解をつくる

まずは、カスタマーハラスメントによる理不尽な要求には応じないこと、従業員をカスタマーハラスメントから守ることをはっきり宣言し、経営者や企業全体でこの姿勢を明確にします。

そして、カスタマーハラスメントに対する行動指針を自社サイトに掲載し、カスタマーハラスメントに対する態度を対外的に表示します。

この時、単にカスタマーハラスメントを排除するという意思ではなく お客様との協力関係を構築してより良いサービスを行うためにお客様に知っていただきたいこと」といった前向きな姿勢を表明することが大事です。

また、企業のを明確にすると宣言することで、カスタマーハラスメントを行う方へ牽制する効果も期待できます。

2. 一般クレームとの判断基準を社内で明確化する

続いて、カスタマーハラスメントと一般クレームとの違いを、社内で明確に区別します。

カスタマーハラスメントと一般クレームの判断基準は、その行為が「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」かどうかで判断します具体的には以下の2点を考えると良いでしょう。

  • 顧客等の行為が会社の商品の不具合、サービスの問題、会社の落ち度等を伝えるための必要な苦情か
  • その態様が苦情を伝えるための方法として相当な範囲のものかどうか

正当なクレームまでカスタマーハラスメントと判断すると、自社の製品やサービス向上ができないばかりか、一般の顧客までも正しい意見が通らない会社だと思われてしまいます。

そのため、上記2点に該当するものは一般クレームとして扱い、この範囲を逸脱するような不法行為をスタマーハラスメントとして取り扱いましょう。

3. カスタマーハラスメント対策マニュアルを作成する

カスタマーハラスメント対策マニュアルを作成する

見解やカスタマーハラスメント判断を社内で統一したら、カスタマーハラスメント対策マニュアルを作成します。

この時、一般クレームのマニュアルとは別に作るのが望ましいでしょう。なぜなら、カスタマーハラスメント対策マニュアルには、刑法的な罪状の認識や法的手段などの手順が含まれるからです。

カスタマーハラスメント対策マニュアルには、以下の具体的内容を盛り込みましょう。

  • 法的責任の有無を確認する
  • 録音・録画・対応履歴など証拠を取る
  • 従業員の相談窓口を設置する
  • カスタマーハラスメントの法律的な罪状を記載する
  • 法的処置を取る場合の対処法を記載する

現場では全ての苦情に対して、最初は一般クレームのマニュアルで対応します。その後カスタマーハラスメントの定義に合致した場合は、速やかにカスタマーハラスメント対策マニュアルへと移行します。

実際にマニュアルを作る手順は「【5分で分かる】カスタマーハラスメント対応マニュアルの作り方【内容から運用のコツまで網羅】」に詳しく解説していますので、こちらをご覧ください。

4. カスタマーハラスメント対応のフローを決める

マニュアルを作成しても、すぐに従業員がマニュアル通りに対応できる訳ではありません。そのため、実際にカスタマーハラスメントの疑いが出た時点で取るべき手順「エスカレーションフロー」をあらかじめ決めておきましょう。

エスカレーションとは、英語の「escalation(段階的な拡大)」が由来であり、意味は業務上の上位者に判断や指示を仰いだり、対応を要請したりすることです。この場合には、現場のスタッフで判断に迷う場合に上司に対応を要請し、対応を引き継ぐことを指します。

実際には以下のように、具体的なステップアップのフローを作成しましょう。

  • カスハラのセルフチェック表を作成する
  • 顧客が要求している内容別にレベル分けする
  • エスカレーション先(上司・担当部署など)を決める
  • メール・電話・チャットなどの連絡手段を決める
  • 誤報を責めずに社内で共有化する
  • 実情に合わせて定期的に見直す

エスカレーションフローで大事なことは、誤報を恐れないことです。「この程度で上司に連絡すると迷惑をかけるかも」と1人で悩んで事態を悪化させないためにも、カスタマーハラスメントに組織で立ち向かうという姿勢が大切です。

5. カスタマーハラスメント対策に関する研修を行う

カスタマーハラスメント対策に関する研修を行う

カスタマーハラスメントの定義やマニュアルができたら、次は従業員への研修です。カスタマーハラスメントは初期対応が特に重要であり、後々に不利な証拠を取られないためにも、従業員があらかじめ対応手順を頭に入れておきましょう。

研修内容はカスタマーハラスメント対策マニュアルを元にしますが、実際はケースバイケースのため、社内で起こった実際のトラブルを 取り入れたロールプレイングを行います。まずは以下のように、一般クレームと同じような対応を行いつつも、法的対応できるような準備を行いましょう。

  • 手の話をよく聞く
  • 初期対応を迅速に行う
  • 何を望んでいるのかを確認する
  • あいまいな返答は避ける
  • 社内全体で状況を共有する
  • 法的に対応すべきケースか判断する

このようなカスタマーハラスメント研修を定期的に行うことで、実際の現場でも従業員が慌てずに対処できるようになるでしょう。

6. 従業員の相談窓口を設置する

カスタマーハラスメントに対応した従業員へのフォローも重要です。実際にカスタマーハラスメントの被害に遭ってしまった従業員のために、相談窓口を設置するなどケアを充分に行いましょう。

これは厚生労働省の告示第五号「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」にも、従業員に対し以下の取り組みが必要と記載されています

  • 相談先(上司や職場内の担当者等)を予め定め、労働者に周知すること
  • 相談を受けた者が、相談に対し、その内容や状況に応じ、適切に対応できるようにしておくこと
  • 事業主が、被害者のメンタルヘルス不調への相談対応、著しい迷惑行為を行った者に対する対応が必要な場合に一人で対応させない

カスタマーハラスメント対応が不適切であった場合、被害を受けた従業員が企業側を訴えた事例もありますので、丁寧な対応が必要です。

7. 法律の専門機関と協力する

不法行為にあたるカスタマーハラスメントに対しては、専門機関との協力が不可欠です。

刑事事件であれば警察へ連絡が必要ですが、事件が起きた時しか連絡できませんし、民事の場合はそもそも警察は対応できません。そのため、マニュアル作成などの事前段階でカスタマーハラスメント対応に長けた弁護士に協力を依頼するのも一案です。

また、たとえ不法行為であるカスタマーハラスメントと判断したとしても、いきなり訴訟を行うわけにはいきません。まずは内容証明郵便などの法的手続きから穏便な話し合いまで、論争のプロである弁護士の協力が必要です。

また弁護士であれば、会社ごとのケースに対応したマニュアル作成や研修の指導もできるでしょう。そのため、できれば事前段階で弁護士と連携しておくのが安心です。

厚生労働省はカスタマーハラスメント対策マニュアル作成に取り組んでいる

厚生労働省はカスタマーハラスメント対策マニュアル作成に取り組んでいる

2021年11月時点では、厚生労働省や政府におけるカスタマーハラスメントに対する統一見解やマニュアルはありません。令和3年度中を目処に、厚生労働省がマニュアル作成を進めています。

2018年3月に厚生労働省が作成した報告書では、以下の内容が記載されています。

顧客や取引先からの悪質な迷惑行為の問題に対応するためには、事業主に対応を求めるのみならず、「カスタマーハラスメント」などの名前をつけて周知・啓発を行うことで、(中略)関係省庁(厚生労働省、経済産業省、国土交通省、消費者庁等)が連携して周知、啓発などを行っていくことが重要であると考えられる。

引用元:職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書

また、2019年6月20日には国際労働機関(ILO)で、職場での暴力やハラスメントを全面的に禁止する初の国際条約が採択されています。ハラスメント禁止国際条約の対象はカスタマーハラスメントも含んでいるのが特徴です。

このように世界的なハラスメント禁止の流れにより、今後はカスタマーハラスメント対策が法律化する可能性も考えられます。

カスタマーハラスメント対策を怠ると法律違反となる可能性も

カスタマーハラスメント対策を怠ると法律違反となる可能性もカスタマーハラスメントの対策を誤って従業員が被害にあってしまうと、企業側が法律違反になる可能性もあります。労働契約法第5条では以下のように記されており、企業は従業員の心身の安全に配慮しなければならないという安全配慮義務を負っているのです。

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする

引用元:厚生労働省|労働契約法

カスタマーハラスメントは従業員のやる気と心身の健康を損ね、離職率の増加にもつながります。また、カスタマーハラスメントで被害を受けた従業員が企業側をパワハラとして訴えた事例もあるので、早急な対応を検討しましょう。

さらにカスタマーハラスメントの対応に追われるとサービス低下も問題となり、他の優良顧客との信頼関係を作る機会を失ってしまいます。従業員と顧客の双方を守るためにも、企業はカスタマーハラスメント問題に真摯に取り組む必要があるのです。

まとめ

カスタマーハラスメント対策まとめ

カスタマーハラスメント対策は、マニュアル作成や研修などの事前準備が重要です。最初から適切な対処方法を従業員と共有しておくことで、思わぬ炎上や損害から従業員や企業を守れます。

また、カスタマーハラスメントには企業側が一丸となって取り組むという姿勢を内外的に示す事で、従業員に対しても安心感を与え、他の顧客に対しても信頼関係を構築できるでしょう。

カスタマーハラスメント対策は法的対策も必要なため、専門的な知識が不可欠です。オンライン弁護士」では、カスタマーハラスメントに対する多くの対策事例があり、最初の30分は相談無料です。また、マニュアル作成から研修までお客様の事例に合わせて細やかに行っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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