カスハラ 2021.11.18

【5分で分かる】カスタマーハラスメント対応マニュアルの作り方【内容から運用のコツまで網羅】

「カスタマーハラスメントへの対応が統一できていない」
「対応マニュアルを作りたいがノウハウがない」
「どのような内容を盛り込むべきか知りたい」

カスタマーハラスメントは比較的最近になって表面化した問題であるため、対応マニュアルを整備できていない企業が多いのではないでしょうか。

悪質なカスタマーハラスメントに冷静に対応するには、マニュアルで社内の方針を固めておくことが重要です。従業員によって顧客への対応が異なると、新たなクレームに繋がりかねません。

しかしカスタマーハラスメントに関するノウハウはまだ確立されておらず、初めてのマニュアル作りでは苦労することも多いでしょう。

そこでこの記事では、カスタマーハラスメントの対応マニュアルを作るために知っておきたい、以下の内容を解説していきます。

  • カスタマーハラスメント対応マニュアルの作り方
  • 対応マニュアルに掲載すべき内容
  • 分かりやすい対応マニュアルを作るコツ
  • 活用のポイント

現場で働く従業員や、対応の責任者となる管理職がカスタマーハラスメントへ自信を持って対応できるよう、ぜひ最後までお読みください。

カスタマーハラスメント対応マニュアルの作り方

カスタマーハラスメント対応マニュアルの作り方

カスタマーハラスメントを作る手段は、主に3つあります。

  1. 対応マニュアルを自作する
  2. マニュアル作成の代行業者に依頼する
  3. 弁護士に相談する

経費をかけずに対応マニュアルを導入するなら社員による自作、専門的な知見を踏まえしっかりと作り込むなら、代行業者や弁護士への相談がおすすめです。

それぞれの方法について、特徴を紹介していきます。

1. 対応マニュアルを自作する

社内で担当者を決め、対応マニュアルを自作する方法です。

メリットは、担当者が社内の意見を吸い上げながら、自社にぴったりなマニュアルを作成できること。カスタマーハラスメントへの対応で困っていることなどを盛り込み、現場目線の内容に仕上げられます。

しかし、社内から選出した担当者には、カスタマーハラスメント対応に関する専門知識がありません。掲載内容に矛盾が生じたり、適切でない対応方法に気づけないままマニュアルが完成したりする可能性があることがデメリットです。

本来任されている他の業務と並行しながら作成にあたるため、従業員の負担となることも考えられます。

2. マニュアル作成の代行業者に依頼する

マニュアル作成の代行業者に依頼するという選択肢もあります。企業の方針をヒアリングした上で、マニュアルを代わりに作成してくれるサービスです。

作成の経験に長けたコンサルタントが対応してくれるため、自社で大きな手間をかけることなく質の高いマニュアルが完成します。一方で作成を依頼するのに、高額な費用を必要とすることがデメリットです。

費用は惜しまず「クオリティ最優先の対応マニュアルを作りたい」とお考えの企業におすすめの方法です。

3. 弁護士に相談する

法的な問題が生じないよう、マニュアル作成を弁護士に相談すると安心です。

次の2つの方法で、対応マニュアルの作成において弁護士の力を借りられます。

  • 弁護士に作成をお任せする
  • 顧問弁護士からアドバイスをもらう

顧問契約を結んでいない弁護士にマニュアルの作成だけをお願いする場合は、高額な費用が必要です。また顧問弁護士であっても、対応範囲を超える依頼では追加料金がかかることがあります。顧問弁護士がいる場合は、制作費用について相談してみましょう。

カスタマーハラスメント対応マニュアルに掲載すべき内容5選

カスタマーハラスメント対応マニュアルに掲載すべき内容

対応マニュアルの作成を従業員に任せる場合は、自社で掲載内容を選定しなければなりません。こちらでは、カスタマーハラスメントの対応マニュアルに掲載すべき内容を、5つ紹介していきます。

  1. 対応マニュアルを作成した目的
  2. カスタマーハラスメントの定義
  3. カスタマーハラスメント対応のフローチャート
  4. 過去に起きたカスタマーハラスメントの事例
  5. 警察への連絡について

自社に合った内容にカスタマイズしながら、これから紹介する内容を対応マニュアルに入れ込んでみてください。

1. 対応マニュアルを作成した目的

対応マニュアルを作成した目的を、導入部分で共有しておきましょう。

  • カスタマーハラスメントの発生を抑える
  • 従業員全員がカスタマーハラスメントに対応できるようにする
  • カスタマーハラスメントの原因をなくす

このように、目的によって対応マニュアルを読んで目指すべき姿が変わるため、最初に読み手と共有することが大切です。目的を知ることで対応のゴールが分かり、従業員がマニュアルを読み進めやすくなる効果もあります。

2. カスタマーハラスメントの定義

どのような事案をカスタマーハラスメントとするのか、定義を決める章です。「会社として本格的に対応すべき事案であるのか」それとも「現場で片付けて良いトラブルなのか」を明確にし、カスタマーハラスメント発生時に一般社員だけで解決を急ぐことがないよう、定義づけする必要があります。

マニュアルでカスタマーハラスメントへの考え方を一本化し、従業員に統率の取れた対応をとってもらえることを目指しましょう。

現場で対応に当たった従業員の判断も尊重できるよう、出来る限り明確に定義することがポイントです。カスタマーハラスメントの定義は、関連記事「【徹底解説】カスタマーハラスメントの意味と企業がとるべき対策7選【相談先紹介あり】」で詳しく紹介しています。対応マニュアル作りの参考に、ぜひ一緒にご確認ください。

3. カスタマーハラスメント対応のフローチャート

マニュアルの中で、責任者や被害者となった従業員が取るべき対応の流れを示しましょう。事前にフローチャートを頭に入れることで、カスタマーハラスメントが発生した際に、従業員がスムーズに対応できるようになります。

顧客による悪質なクレームについて、管理者向けにフローチャートを掲載するなら、内容の例は以下の通りです。

  • 不快な思いをさせたことについて謝罪する
  • 顧客の意見を把握する
  • 顧客の意見が正しいか事実を確認する
  • カスタマーハラスメントであると判断したら法務部と連携をとり対応を検討する

現場で初動の対応にあたる一般社員には、上司に報告するまでのフローチャートを入れるなど、立場に応じた行動ができるよう工夫しましょう。

4. 過去に起きたカスタマーハラスメントの事例

どのようなカスタマーハラスメントがよく起こり、どのように対応してきたのかを掲載することもおすすめです。従業員が「もし自分が対応するなら……」と想定したり、掲載事例に近い出来事が起きた際に過去の対応ミスを繰り返さないように意識したりできる効果があります。

カスタマーハラスメントへの対応実績がない企業では、同じ業界の他社の事例を参考にし、掲載するのも有効な手法です。

5. 警察への連絡について

警察へ連絡する際の対応方法についても、マニュアルに掲載しておきましょう。危険性・緊急性が高いカスタマーハラスメントでは、警察への連絡も視野に入れる必要があります。

例えば次のような内容を掲載しておくと、万が一の際に参考にできます。

  • 最寄りの警察署の連絡先
  • 状況説明の例文
  • 緊急通報をすべきか判断する基準

ハラスメントを受けている本人のみならず、状況を客観的に見た同僚が通報することも想定して、マニュアル化してみてください。

使いやすいカスタマーハラスメント対応マニュアルを作成する3つのコツ

使いやすいカスタマーハラスメント対応マニュアルを作成するコツ

従業員にとって使いやすい対応マニュアルにするには、次の3つのコツを意識してみましょう。

  1. 読み手が理解しやすい表現を意識する
  2. 文字の装飾やイラストを活用する
  3. 属人化の防止を意識する

普段から手に取ってもらえる、分かりやすい対応マニュアルを作ってくださいね。

1. 読み手が理解しやすい表現を意識する

読み手が理解しやすい表現で、マニュアルを仕上げましょう。従業員の立場や年代によって知識量に差があるためです。

読み手に合わせた難易度で解説しなければ、対応マニュアルを正しく理解してもらうことは難しいでしょう。

  • 管理職か一般社員か
  • 新卒者か中堅社員か
  • 正社員かパート従業員か

このような立場の違いで、カスタマーハラスメントへのアプローチ内容も変わります。役職などに応じて、記載する内容を使い分けることも有効です。

2. 文字の装飾やイラストを活用する

文字や装飾で、視覚的に分かりやすい対応マニュアルを作ることもポイントです。文字の羅列になってしまうと、内容が頭に入りにくい対応マニュアルになってしまいます。重要な箇所を太字にしたり、本文と見出しの文字サイズを変えたりして、読みやすい対応マニュアルを作りましょう。

言葉で一度に説明すると複雑になる内容は、図解を入れると分かりやすいです。ただし過度な装飾は、本当に重要な点が埋もれ逆効果になる恐れがあるので注意してください。

3. 属人化の防止を意識する

属人化とは「特定の社員でないと対応の進め方が分からない」といった状態を指す言葉です。「Aさんでないとカスタマーハラスメントに対応できない」「マニュアルの内容をBさんに詳しく聞かなければ対応できない」といった状況に陥っては、せっかくマニュアルを作った意味が薄れてしまいます。

カスタマーハラスメントの対応に関わっていた人物が退職しても「マニュアルを参考にすれば現場が混乱することなく解決できる」という状態が理想です。誰でも簡単に内容を実行に移せるような対応マニュアルを作り、ノウハウの属人化を防ぎましょう。

カスタマーハラスメント対応マニュアルを活用する6つのポイント

カスタマーハラスメント対応マニュアルを活用するポイント

「配布して終わり」では、せっかく作った対応マニュアルを活用しきません。対応マニュアルを有意義に使えるよう、行動のポイントを紹介していきます。

  1. いつでも見られる場所に対応マニュアルを設置する
  2. 対応マニュアルの内容を定期的にアップデートする
  3. マニュアルに頼りすぎず柔軟な対応を心がける
  4. ロールプレイングを実施する
  5. 社内のマニュアルを1本化する

それぞれ詳しく紹介していきます。

1. いつでも見られる場所に対応マニュアルを設置する

マニュアルは、いつでも見られる場所に設置しましょう。

「マニュアルがどこにあるか分からない」「特別な手続きをしないと閲覧できない」といった状況では、従業員にノウハウが浸透しません。

気になったことがあったらすぐに閲覧できるようにしておくことが重要です。従業員に配布したり、社内システムなどにアップロードしたりと工夫することをおすすめします。

2. 対応マニュアルの内容を定期的にアップデートする

カスタマーハラスメントに対応していく中で分かったノウハウや傾向から、対応マニュアルをアップデートすると運用効果が上がります。

カスタマーハラスメントの対応内容について報告書を集め、マニュアル改訂時の参考にすると良いでしょう。

  • アップデートのタイミング
  • 更新内容の決定方法
  • 担当部署・担当者
  • 内容の確認担当者

などを決めた上で対応マニュアルを運用すると、スムーズに内容をアップデートできます。

3. マニュアルに頼りすぎず柔軟な対応を心がける

マニュアル通りに対応すれば、全てのカスタマーハラスメントに対応できるわけではありません。マニュアルを参考にしながらも、柔軟に対応するよう心掛けましょう。

対応マニュアルはあくまで教科書であり「その通りに行動すれば必ず場が丸く収まる」といった万能な存在ではないためです。

カスタマーハラスメントをしてくる顧客は冷静ではなく、想定外の行動をとる可能性あります。対応マニュアルで示しているフローチャートや事例は参考にしながらも、状況に応じた行動がとれることが理想です。

4. ロールプレイングを実施する

ロールプレイングとは、従業員同士で顧客役と対応担当者役に分かれて行う模擬演習です。マニュアルを参考にして、カスタマーハラスメント対応の本番を想定した訓練を行いましょう。

マニュアルで座学的な理解は進んでも、いざ現場に直面すると適切な行動を取れない場合があります。そのため、ロールプレイングで経験を積み、実際の対応に備えておくことが求められるのです。

社内研修などで、定期的にロールプレイングを実施してください。

5. 社内のマニュアルを1本化する

社内の対応マニュアルを1本化させ、適切に管理してください。

  • 同じテーマの対応マニュアルがいくつも存在する
  • 部署によって使用している対応マニュアルが異なる
  • 古いバージョンの対応マニュアルが運用されている

このような状況では、どの対応マニュアルの内容を優先させればいいか分からず、いざというときに参考にしにくいです。社内で運用されるマニュアルとそのバージョンは統一し、対応内容の認識に差が生まれないようにしましょう。

6. 管理責任者を定める

管理責任者を決め、対応マニュアルを円滑に運用できる体制を作りましょう。

  • 従業員が対応マニュアルを読んでいるか
  • 対応マニュアルの内容を行動に移せているか
  • 内容を更新すべき点はないか

などを確認し、社内で対応マニュアルが役立つよう管理していく立場です。

部署やチームごとに、カスタマーハラスメントの対応経験が豊富な社員を管理責任者として選出ししましょう。従業員が内容に疑問を持った際に的確な回答ができるよう、管理責任者はマニュアルをよく理解しておかなければりません。

まとめ

まとめ

社内で対応マニュアルを共有しておけば、カスタマーハラスメントに冷静に対処できるようになります。カスタマーハラスメントの発生に備え、ぜひ対応マニュアルを活用しましょう。

「対応マニュアルを作成するのが初めて」「カスタマーハラスメントへの対応経験が浅い」といった場合は、弁護士に相談しながら企業に合った内容を詰めていくのも方法の1つです。

オンライン顧問弁護士」では、カスタマーハラスメントに関するあらゆるご相談を受け付けています。30分の無料相談も実施していますので、対応マニュアルの作成でお困りの際はぜひお問い合わせください。

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