「カスタマーハラスメントは訴えられる?」
「どんな手順で訴えればよいのか知りたい」
「カスタマーハラスメントは犯罪に該当するのか知りたい」
カスタマーハラスメントに対し、企業側は毅然とした対応を行うことが必要です。度を超えた顧客からのクレームは犯罪行為に該当することがあり、企業としては訴える選択肢も考えなければなりません。
しかし、カスタマーハラスメントを訴える手順がよくわからず、悩んでいる責任者もいるでしょう。
そこで、こちらの記事では以下の内容について解説していきます。
- カスタマーハラスメントを訴えるまでの手順
- 犯罪に該当し得るカスタマーハラスメント
- カスタマーハラスメントを訴える前に企業で行うべき対策
企業は、カスタマーハラスメントから従業員を守る義務があります。法的手段に訴えるほどの迷惑行為にお困りなら、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
カスタマーハラスメントを訴えるまでの4ステップ
カスタマーハラスメントを訴えるまでの手順は、主に4つのステップを踏んでいきます。
- カスタマーハラスメントである証拠を集める
- 会社内で話し合いの上弁護士に相談する
- 弁護士を通じて交渉する
- 訴訟の手続きを行う
ひとつずつ、確認してみてください。
1.カスタマーハラスメントである証拠を集める
法的手段に訴えるならまずは、カスタマーハラスメントである証拠を集めましょう。カスタマーハラスメントとは、一般的に顧客からの不当なクレームや嫌がらせ行為のことを指します。すべてのクレームがカスタマーハラスメントに該当するわけではない点に、注意が必要です。
しかし、クレームとカスタマーハラスメントの違いを見分けるのは難しいものです。弁護士などの専門家に相談する前に、ハラスメントがあった事実を客観的に証明できる証拠を揃えておくとスムーズでしょう。
証拠になるものとしては、
- 録音した音声データ
- 防犯カメラなどの画像データ
- 来訪した日時や回数
- 電話の通話記録ややりとりを記録したメモ
などが挙げられます。集められる証拠は、すべて揃えておいたほうが安心です。
法的手段に訴えることを理由に「記録を取らせていただきます」と顧客に伝えると、場合によってはその場で迷惑行為や嫌がらせが収まることもあります。なお、相手に記録を取ることを伝えなくても、法律上問題ありません。
2.会社内で話し合いの上弁護士に相談する
会社内で、法的手段に訴えるかどうかを話し合いましょう。カスタマーハラスメントは、従業員に精神的ダメージを与えるリスクがあります。事業主は、従業員の心身の健康に配慮する義務があり、然るべき対応を行うことも必要です。
「企業としてどう対応すればよいか悩んでいる」「法的手段に訴えたい」などの方針が決まったら、刑法や労働法制についての知識を有している弁護士に相談するのがよいでしょう。
ただし、顧客が暴力的な行動を取るなど、迅速に対処しなければならない場合はすぐ警察に連絡し、被害を最小限に留めることが必要です。
3.弁護士を通じて交渉する
弁護士は、顧客と直接交渉も行ってくれます。弁護士を介さず交渉しようとすると、顧客が優位な立場であることを利用して、企業が不当な要求をのんでしまうリスクがあるでしょう。弁護士が対応すると聞いただけで、相手が引き下がるケースがあります。
また、顧客が金銭を要求している場合、妥当なのか不当なのか、企業では判断がつかないこともあるでしょう。法律に詳しい弁護士に交渉してもらい、不当な要求に対してはっきりと「応じない」と示してもらえると心強いです。
4.訴訟の手続きを行う
相手側が交渉に応じない場合は、訴訟の手続きを行います。カスタマーハラスメントを訴える方法は、主に2つあります。
- 民事訴訟:双方のトラブル解決を目的とするもの。企業側が、顧客に対応する義務がないことを裁判所に認めてもらう場合に行う。
- 刑事告訴:顧客が犯罪行為を行ったかどうかを判断してもらうもの。過剰な金品の要求や脅迫などを行った場合、顧客に対して処罰を求められる。
刑事告訴の場合、警察に捜査してもらうためには告訴状の提出が必要です。弁護士に相談すれば、告訴状の作成を依頼できます。
どちらの訴訟が解決策につながるのか、弁護士に相談しながら最適な方法を選んでいきましょう。
クレーマーを訴える法的措置については「クレーマーを訴える方法は2つ!法的措置における注意点や企業が取るべき8つの対策を解説」でも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
カスタマーハラスメントに該当し得る7つの犯罪行為
悪質なカスタマーハラスメントは、犯罪行為に該当することがあります。こちらでは、カスハラが該当し得る犯罪行為を7つ紹介していきます。
- 軽犯罪違反
- 脅迫罪
- 恐喝罪
- 強要罪
- 威力業務妨害
- 不退去罪
- 侮蔑罪
どんな行為が犯罪になるのか、確認してみてください。
1.軽犯罪違反
軽犯罪違反は、日常生活で守るべき最低限度の道徳を定めた法律です。
例えば、
- 大声で喚き散らす:粗野乱暴の罪
- 火災報知器のボタンを押す行為:業務妨害の罪
など、いたずらとも取られるような行為も含まれていて、比較的軽い犯罪が該当します。
しかし、軽犯罪といっても中には刑法犯として重い処分を科されることもあります。該当する場合は30日未満の拘留または、1万円未満の徴収です。
2.脅迫罪
脅迫罪は、生命・身体・自由・名誉・財産に対し、害を加える旨を告知して人を脅迫することです。
例えば、
- 「殺すぞ」と発言する
- 「SNSにさらしてやる」とメールを送る
- 机をたたく・壁を蹴る
などの威嚇行為を行って、納得できないことを執拗に迫る行為などが該当します。2年以下の懲役または30万円以下の罰金に科されます。
3.恐喝罪
恐喝罪は、脅迫・暴行を行って相手から金品を取ることです。脅迫罪と似ていますが、金品を要求することが加わります。
例えば、
- 「お金を渡さないと痛い目を見るぞ」
- 「ネットに悪評を流してやる」
- 「傷つけられたくなかったら慰謝料100万円よこせ」
など、過剰な見返りや金品を要求するなどが挙げられます。10年以下の懲役に科され、罰金刑はありません。
4.強要罪
強要罪は、生命・身体・自由・名誉・財産に害を加える旨を告知した上で、脅迫や暴行を用いて、相手に義務のないことをさせる行為です。
例えば、
- 「今すぐここで土下座しろ」
- 「関係者が辞職しなければ納得できない」
- 「謝罪文を提出しろ」
など、義務を超えた行為を強要することが挙げられます。該当する場合、3年以下の懲役に科されます。
5.威力業務妨害
威力業務妨害は、威力を用いて業務を妨害するおそれのある行為です。
例えば、
- 大声をあげたり机を叩いたりして、周囲の人に迷惑をかけて無理やり要求を通そうとする
- 「この店はお客様に向かってこんな発言をするんですよ」と周囲の人に大声で言いふらす
- 飲食店で「自分はウイルスを持っている」といって、店員に店内を消毒せざるを得なくして業務を止める
などが挙げられます。該当する場合は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
6.不退去罪
不退去罪は、社屋や店舗などの私有地に居座り続ける行為のことです。不退去罪を正当化するには、再三にわたって引き取りをお願いすることが必要です。
何度も警告しているにもかかわらず退去しない場合は、不退去罪が該当します。複数回にわたって警告することをICレコーダーなどに記録しておくと、万が一裁判になったときに有力な証拠となります。
該当する場合、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金です。
7.侮蔑罪
侮蔑罪は、事実を確認できない抽象的な暴言を吐くことです。
例えば、大勢の前で「バカ」「無能」などと暴言を投げかけて人を侮辱した場合、侮蔑罪が成立する可能性があります。
該当する場合、30日未満の刑事施設への収容または、1万円未満の金銭徴収です。
法律違反に該当するカスハラや、判例については「法律違反に該当するカスタマーハラスメント5つの特徴!判例と確認すべきポイントを紹介」でも解説していますので、参考にしてみてください。
カスタマーハラスメントを訴える前に企業が講じるべき対応
企業は、カスタマーハラスメントに対して然るべき対応を行う必要があります。訴えることも正当な対応ですが、安全配慮義務の一環として企業でカスタマーハラスメント対策を講じることも大切です。
こちらでは、カスタマーハラスメントに対し、企業が講じるべき4つの対応について紹介します。
- マニュアルや対応フローを作成する
- カスハラ対策への研修を行う
- 相談窓口を設置する
- 従業員のストレス対策を行う
悪質なクレーマーはいつ現れるかわからないので、日頃からカスハラへ対策を行っておきましょう。
1.マニュアルや対応フローを作成する
顧客からの迷惑行為や不当な要求に対応できるよう、マニュアルや対応フローを作成しておきましょう。通常のクレームとカスタマーハラスメントの違いは判別が難しく、とっさに最善の行動に移せないからです。
作成する際に重要視すべきポイントは、以下のとおりです。
- 悪質な顧客が現れたときに、誰にどの段階で対応するのか
- カスタマーハラスメントと通常のクレームはどのような違いがあるのか
- 対応フローは、従業員のどの範囲まで共有すべきか
顧客対応にあたる従業員が、いざというときに適切に行動できる状態にしておくことが大切です。
企業のカスハラガイドラインに入れるべき内容については「【解決策】カスタマーハラスメントに厚生労働省のガイドラインはあるのか?企業での作成法を紹介」にて解説していますので、参考にしてみてください。
2.カスハラ対策への研修を行う
カスハラ対策マニュアルを作成し、配付するだけでは不十分でしょう。顧客のタイプはさまざまなので、いざというときマニュアルどおりに動けない可能性が高いからです。
過去の事例や他社の事例を確認し、ロールプレイング形式で具体的な対応方法を習得しておくことが必要です。さまざまなケースに対応できるよう、定期的に研修を行ってみてください。
3.相談窓口を設置する
カスタマーハラスメントに対して適切な対処を行えるよう、従業員の相談窓口を設置しましょう。窓口を設置したら、存在を周知することも必要です。相談窓口を一本化していれば、自社に来るクレームの内容やクレーマーの特徴も把握できます。
クレーム対応に詳しい弁護士に、直接相談できる環境を整えておくとより安心です。顧問弁護士にアドバイスをもらうことで、企業のカスタマーハラスメント対策がより強化できるでしょう。
4.従業員のストレス対策を行う
企業は、カスタマーハラスメント対応を行った従業員のメンタルヘルスケアを行う義務があります。カウンセリングを行ったり、いつでも配置換えができる体制を整えておいたりすることが必要です。
また、普段からカスハラにはひとりで対応しない環境を整えておくとよいでしょう。一人で対応せざるを得ない状況で業務を行っているのであれば、見直しが必須です。顧客に対する対策だけでなく、自社の従業員のストレス対策もしっかり行いましょう。
まとめ
カスタマーハラスメントを訴えるなら、まずは証拠を集め、弁護士に相談してみるのがおすすめです。場合によっては、弁護士が顧客と直接交渉することで、訴訟を行うことなく解決するケースがあります。カスタマーハラスメントに対し、企業にとって一番良い解決策を選択できるよう、顧問弁護士に相談できる体制を整えておくのがよいでしょう。
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