「カスタマーハラスメントって何?」
「カスタマーハラスメントにはどんなリスクがあるの?」
「カスタマーハラスメントの対策が知りたい」
このようなお悩みを抱えていませんか?
近年では、カスタマーハラスメントが問題視されています。悪質なクレームや理不尽な要求により、企業に多大な影響を及ぼすケースも珍しくありません。
しかし、カスタマーハラスメントがどのような行為を指すのか分からない方が多いのではないでしょうか。特に、対応すべき正当なクレームとの違いは理解しにくい部分です。
そこでこの記事では、カスタマーハラスメントについて
- 定義や正当なクレームとの違い
- 企業が対策を取るべき理由
- 具体的な対策
などを弁護士の観点から解説します。当コラムを読むことで、カスタマーハラスメントに該当する行為から対策方法まで明確になります。ぜひご一読ください。
カスタマーハラスメントとは?定義や事例などを解説
どのような行為がカスタマーハラスメントに該当するのか、分からない方が多いのではないでしょうか。企業が対応すべき正当なクレームとの違いを理解していない方も少なくないでしょう。
そこでこちらでは、以下4つの項目を解説します。
- カスタマーハラスメントの定義
- カスタマーハラスメントの現状
- カスタマーハラスメントの事例
- 正当なクレームとの違い
「カスタマーハラスメントの知識を身に付けたい」と考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
1. カスタマーハラスメントの定義
カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先から受ける嫌がらせや、過度なクレームのことです。
カスタマーハラスメントが起こる背景として、顧客が優位な立場を利用していることが挙げられます。「お金を支払っているから」「長く取引をしているから」という気持ちから、企業に対して過度な要求をしたり、嫌がらせのような行為をしたりするのです。
カスタマーハラスメントの定義についてよく詳しく知りたい方は、関連記事「【徹底解説】カスタマーハラスメントの意味と企業がとるべき対策7選【相談先紹介あり】」をご覧ください。
2. カスタマーハラスメントの現状
近年では、カスタマーハラスメントが社会問題となっています。
UAゼンセン流通部門が2017年に、スーパーマーケットや百貨店などの接客対応をしている流通部門所属組合員を対象にアンケートを取っています。アンケートでは「業務中に来店客からの迷惑行為に遭遇したことがある」と回答した人は、全体の70.1%に上りました。この結果から、カスタマーハラスメントに遭うのはそう珍しいことではないと分かります。
遭遇した迷惑行為として、
- 暴言
- 何回も同じ内容を繰り返すクレーム
- 権威的(説教)態度
- 威嚇・強迫
- 長時間拘束
などが挙げられます。
なお、カスタマーハラスメントは、スーパーマーケットや百貨店など接客業だけでなく、介護の現場でも問題視されています。利用者や家族などから、暴力やセクシュアルハラスメントを受けるケースが少なくありません。
介護現場におけるカスタマーハラスメントの現状については、関連記事「【保存版】介護現場のカスタマーハラスメント対策7選【相談先を3つ紹介】」にて詳しく解説しています。具体的な対策につても説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。
また、カスタマーハラスメントは顧客からだけでなく、企業間の取引の中でも行われています。関連記事の「【必見】取引先によるカスタマーハラスメントの実態とは?5つの対策を紹介」で解説していますので、ぜひご覧になってみてください。
3. カスタマーハラスメントの事例
カスタマーハラスメントと一言でまとめても、様々なケースがあります。代表的な事例は、以下の4つです。
- 顧客としての立場を濫用する
例:反社会勢力が後ろ盾にいることをうたい文句に金銭を巻き上げる - 不当・過剰・法外な要求や対応の強要
例:購入した商品が不良品だったため、慰謝料の支払いを求められる - 職務妨害行為
例:長時間にわたって、従業員を拘束する - 担当者の尊厳を傷つける行為
例:土下座など常識の範疇を超えた謝罪を強要する
このような行為は、従業員の心身に多大な影響を及ぼしたり、事業活動に支障をきたしたりします。
なお、カスタマーハラスメントに該当する事例は増加傾向にあります。「【21年11月最新】企業に損害を与えるカスハラ事例4選【対応策を紹介】」では。どのような行為がカスタマーハラスメントに当てはまるのかをより詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
4.正当なクレームとの違い
カスタマーハラスメントが従業員などに対する嫌がらせであるのに対し、正当なクレームは企業の落ち度や改善すべき点に苦情を伝えるものです。そのため、クレーム自体に悪い意味はありません。
正当なクレームの事例は、主に以下の通りです。
- 届いた商品がイメージ写真と大きく異なった
- 料理に異物が入っていた
- 従業員の態度が明らかに悪い
企業は、このような指摘は真摯に受け止め、改善に努めなければなりません。
カスタマーハラスメントと正当なクレームとの違いは、関連記事「【もう悩まない】客からのハラスメントと正当なクレームの違いは?企業が取るべき4つの対策を紹介」にてさらに詳しく解説しています。
企業がカスタマーハラスメント対策を取るべき3つの理由
企業は、カスタマーハラスメント対して対策を練る必要があります。主な理由は、以下の3点です。
- 従業員を守る義務があるため
- サービスが低下するため
- 離職率の増加に繋がるため
上記の内容は、カスタマーハラスメントが企業にもたらすリスクです。各項目について、順番に解説します。
なお、企業に様々なリスクをもたらすカスタマーハラスメントを撃退する方法について「【解決策】カスハラの撃退法6STEP!行っておくべき6つの対処法も解説」にて解説しています。こちらも、ぜひご覧になってみてください。
1. 従業員の安全を守る義務があるため
企業がカスタマーハラスメント対策を取るべき理由は、従業員の安全性を守る義務があるためです。「安全配慮義務」と呼ばれており、労働契約法第5条によって定められています。
安全配慮義務は、以下2つの軸を要因としています。
- 作業環境
- 健康管理
作業環境は、安全に働ける状況のことです。例えば、機器のメンテナンスや設備の導入などが挙げられます。
健康管理は、従業員の心と体の健康を守ることです。特に近年では、メンタルヘルスのチェックや改善が重要視されています。
カスタマーハラスメントは、対応したスタッフの心身共に大きな負担となる場合があります。従業員の心と体の安全を守るためには、カスタマーハラスメント対策を取らなければなりません。
2. サービスが低下するため
カスタマーハラスメントに対応することで、他の顧客へのサービスが低下する危険性があります。
例えば、小売店で不当な要求を求める顧客に拘束されると、他の顧客には接客できません。同じタイミングで別の顧客が何か探し物をしていた場合、尋ねる従業員がいなかったために不満を感じたまま店を後にするケースが考えられます。
顧客満足度を上げるためには、迷惑行為を働く顧客に適切な対応を行い、サービスの質を保つことが大切です。
なお、カスタマーハラスメントによるサービスの低下は、コールセンターの現場で特に問題視されています。対応時間が長くなることで、電話が繋がりにくくなってしまうなどの影響を及ぼすためです。
コールセンターが取るべきカスタマーハラスメント対策は、関連記事「【これで解決】カスタマーハラスメントによるコールセンターの損失と5つの対策を紹介」にて解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
3.離職率の増加に繋がるため
カスタマーハラスメントは、離職率の増加に繋がる場合があります。
理不尽な要求や暴力・暴言などを受けた従業員は、心に傷を負う可能性があるためです。カスタマーハラスメントによる精神的な負担が原因となり、退職に繋がるケースがあります。
さらに、新しい人材を採用しても、環境を変えなければスタッフが定着しないなどのトラブルに発展することも考えられます。このような状態では、事業の継続にも大きな影響を及ぼすでしょう。
従業員が長く働けるよう、企業はカスタマーハラスメント対策を取ることが求められています。
カスタマーハラスメントに関する厚生労働省の指針
カスタマーハラスメントに対して、自社でどのように対応するか悩んでいる方が多いと思います。そのため、厚生労働省の指針を参考にしたいと考えている方がいるのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、2021年11月時点では、カスタマーハラスメントに関する厚生労働省のマニュアル・ガイドラインはありません。
しかし、悪質クレームの対策についての会議は、2015年から行われています。2020年12月には「カスタマーハラスメント 実態調査 緊急報告集会」が国会フォーラムで開催され、今後の取り組みを進めていくこととなりました。
なお、厚生労働省は、2022年3月末(令和3年度)までに、企業向けのマニュアルを作成することを発表しています。そのため、今後はカスタマーハラスメントに対して、明確な指針が出ることが期待されています。
(参考:第1回 顧客等からの著しい迷惑行為の防止対策の推進に係る関係省庁連携会議|厚生労働省)
カスタマーハラスメントに対する厚生労働省の見解は、関連記事「【2021年最新】カスタマーハラスメントに関する厚生労働省の指針は?企業が取るべき9つの対策を紹介」にてより詳しく解説しています。厚生労働省が発表している対策も紹介しているので、ぜひご覧ください。
カスタマーハラスメントに対する法的措置
カスタマーハラスメントに対する法的措置は、主に以下の2つに分けられます。
- 民事
- 刑事
ただし、不用意な対応をすると企業側が逆に訴えられるケースがあるため、法的措置を取る場合は慎重な対応が必要です。
カスタマーハラスメントに対して法的措置を取る際には注意すべきポイントについては「クレーマーを訴える方法は2つ!法的措置における注意点や企業が取るべき8つの対策を解説」にて詳しく解説していますので、こちらも参考にしてみてください
1. 民事の場合
企業は迷惑行為を行う顧客に対して、主に以下2つの民事訴訟を起こせます。
- 損害賠償訴訟
- 債務不存在確認訴訟
損害賠償訴訟は、カスタマーハラスメントが原因で企業・法人に実害を及ぼしている場合に、損害賠償の請求を申し出ることです。この訴訟を通すためには、損害を受けたことの証明が必要です。例えば、相手方がどのような言動を取り、企業にどんな影響を及ぼしたのかなどの証拠の提出が求められます。
債務不存在確認訴訟は「企業がカスタマーハラスメントに対応する義務がないこと」を裁判所に認めてもらう手続きです。顧客から理不尽な要求を受けていることを主張できれば、訴訟が認められる傾向にあります。
なお、2016年には自治体職員に対する住民の暴言や悪質な要求に対して、面談強要行為の差し止めと損害賠償請求が認められた判例があります。顧客の要求・言動が違法行為なのか見極めるのが難しい場合は、関連記事「【判例あり】カスタマーハラスメントで裁判できるのか?該当する違法行為を5つ紹介」を参考にしてみてください。
2. 刑事の場合
顧客が従業員や企業に対して、脅迫や恐喝などの罪を犯した場合は、刑事告訴を行えます。刑事告訴とは、警察へ迷惑行為を働いた顧客の処罰を求めることです。
例えば、以下の行為は罪に該当する場合があります。
- 脅迫・脅し
- 過剰な金品の要求
- 理不尽な行動を強要する
- 業務を妨害する
- 居座り行為
このような行動は、従業員が危険にさらされるケースが珍しくありません。顧客による行動でも犯罪行為であれば、法的措置を検討しましょう。
刑事告訴を行う手順については、関連記事「【これで解決】カスタマーハラスメントを訴えるまでの4ステップ!7つの犯罪行為を紹介」にて詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
企業が取るべきカスタマーハラスメント対策5選
カスタマーハラスメントから企業や従業員を守るためには、対策を練ることが大切です。こちらでは、企業が取り組むべき5つの対策を解説します。
- カスタマーハラスメントのマニュアルを作成する
- カスタマーハラスメントの研修を行う
- 相談窓口を作る
- 従業員のメンタルヘルスケアを心掛ける
- 外部機関と連携しながら対応する
さらに詳しい内容は「【保存版】カスタマーハラスメント対策への7ステップ【法的知識が重要】」にて解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
1. カスタマーハラスメントのマニュアルを作成する
カスタマーハラスメントの定義を社内で決めて、マニュアルを作りましょう。
マニュアルがあることで、正当なクレームとの違いが分かり、顧客への対応方法が明確になります。加えて、過剰な要求や理不尽なクレームを行われた際に、相手方に対して上手く切り返せるでしょう。
従業員も安心してクレーム対応に当たれるので、いつでも閲覧できるよう作成しておくことを推奨します。
カスタマーハラスメントのマニュアルの作成方法や掲載すべき内容は、関連記事「【5分で分かる】カスタマーハラスメント対応マニュアルの作り方【内容から運用 のコツまで網羅】」にて解説しています。
2. カスタマーハラスメントの研修を行う
研修の実施は、カスタマーハラスメントの対策として有効です。マニュアルを用意しても、内容が頭に入っていなければ、いざというときに対応できないためです。
研修を行う際は、座学だけではなく、ロールプレイングも併せて実施しましょう。従業員に実際のクレーム対応を想定させることで、過剰な要求に対して自信を持って切り返しできるようになります。
3. 相談窓口を作る
カスタマーハラスメントの対策方法として、社内に相談窓口を作る方法があります。
理不尽な言動や迷惑行為があったことを、社内に素早く伝えられることがメリットです。カスタマーハラスメントの内容や対応方法を共有することで、再発防止の効果も期待できます。
さらに、気軽に相談できる窓口があることで、クレーム対応した従業員が報告しやすい環境を作れます。
カスタマーハラスメントの相談窓口については、関連記事「【保存版】企業が使えるカスタマーハラスメントの相談窓口3選【社内の対策も紹介】」にて解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
4. 従業員のメンタルヘルスケアを心掛ける
カスタマーハラスメント対策をする際には、従業員のメンタルヘルスケアを心掛けましょう。
暴力・暴言が原因で、従業員の心が傷付く可能性があるためです。スタッフに精神的なストレスがつのり、退職を考えるまで追い込まれる場合があります。
カスタマーハラスメントを受けた従業員には、管理監督者または産業保健スタッフなどによるメンタルヘルスケアを行いましょう。
5. 外部機関と連携しながら対応する
自社だけでは問題解決が難しいと感じた場合は、外部機関と連携しながら対応しましょう。
具体的な相談先は、以下の通りです。
- 弁護士
- 警察
- 保険会社
- 行政・市区町村の相談窓口
特に、弁護士は法律の知識や過去の判例から、企業がどのように対応するべきなのかアドバイスしてくれます。さらに、企業の代理人としてクレーム対応を行ってくれるため、円滑な解決が望めるでしょう。
カスタマーハラスメントで警察に頼れるケースについては、関連記事「【解決】カスタマーハラスメント被害で警察に頼れるのか?7つのケースと対処法を紹介」にて解説しています。
また、カスタマーハラスメントに対応した保険については「【2021年最新】カスタマーハラスメントに対応した保険7選!【メリット・デメリットを紹介】」にて詳しく解説していますので、併せて参考にしてみてください。
まとめ
カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先から受ける過剰なクレームや、嫌がらせを指します。サービスの低下や離職率の増加などのリスクがあるため、円滑な事業活動を行うには対策を練らなければなりません。
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