「客から理不尽な要求やクレームに困っている」
「クレームとハラスメントの線引きができない」
「客からのハラスメントへの対処法が知りたい」
このような悩みにお答えしていきます。
顧客からの行き過ぎたクレームや、理不尽な要求に対しどのように対応したらよいのか悩んでいる企業担当者もいるでしょう。顧客からの悪質なクレームはハラスメントであり、適切に対処する必要があります。
それでも、通常のクレームとハラスメントとの線引は難しく、対処法に悩むのはよくあることです。しかし、企業はハラスメントから従業員を守る義務があり、放置してはいけません。
そこで、こちらの記事では以下の内容について解説していきます。
- 客からのハラスメントの概要やクレームとの違い
- 悪質なハラスメントかどうか見分ける方法
- 客からのハラスメントが犯罪に該当するケース
- 客からのハラスメントへの対処法や防ぐために行っておくこと
ぜひこの記事を参考に、客からのハラスメントへの対策を講じてみてください。
客からのハラスメントについて解説
まずは、客からのハラスメントについて基本的なところを確認していきましょう。ここでは、2つの項目に分けて解説していきます。
- 客からのハラスメントとは
- 客からのハラスメントによる企業への影響
そもそも「客からのハラスメントとは?」と疑問に思う方は参考にしてみてください。
1. 客からのハラスメントとは
客からのハラスメントは、カスタマーハラスメント(カスハラ)ともいいます。パワーハラスメント(パワハラ)やモラルハラスメント(モラハラ)と並ぶ、迷惑行為の1つです。
例えば、店員の対応が不満であることを理由に土下座を強要したり、支払いを拒否したりする行為が該当します。
客からのハラスメントは年々増加しているといわれており、原因のひとつにSNSの普及が挙げられます。製品やサービスに不備があればSNSの拡散力によりあっという間に広がるため、企業は消費者の目を常に気にしなければなりません。
顧客の「要求レベル」や「権利意識」がどんどん高まっており、ハラスメントが増加しているといえます。
2. 客からのハラスメントによる企業への影響
客からのハラスメントに適切に対処しないと、企業に悪い影響を与えます。
顧客から悪質なクレームを受けたとき、どう対処すればよいのかあらかじめ社内で共有している企業なら、いざというときでも対応できるでしょう。しかし、マニュアル化されていない場合、特に入社歴の浅い社員は対処法がわかりません。
悪質なクレームを社歴の若い人がひとりで対応し、嫌な思いをした上に会社も守ってくれないとなると、心に傷が残ります。
客からのハラスメント対応で心に傷を負った従業員を放置してしまうと、事業主の責任問題にも発展する恐れがあるため、きちんと対策しておく必要があります。
客からのハラスメントとクレームの違い
客からのハラスメントと、正当なクレームは同じではありません。見分けるのは難しいですが、以下の内容を参考にしてみてください。
- 客からのハラスメント:消費者が事業主に対して不当・過剰な要求を押し付ける
- 正当なクレーム:消費者が事業主に対して、商品の不備を指摘し追加サービスの提供や良品交換を求める
しかし、クレームが過剰になれば悪質とみなされることもあるため、明確に線引をするのは難しいです。
悪質なクレームの例は、以下のようなケースです。
- 長時間の対応を求められる(例:「閉店時間なんて関係ない、上司が来るまで待たせてもらうぞ」)
- 顧客として優遇を求める言動をする(例:「お客様は神様だろう」「ネットで炎上させてやる」)
- 要求の内容が過度・不当である(例:特別な便宜の供与を要求する)
- 担当者の尊厳を傷つける(例:個人情報を晒すと脅す、土下座を強要する)
顧客だから何でも許されるということはありません。悪質なハラスメントには、毅然とした態度で適切な処置を行いましょう。
悪質な客からのハラスメントは犯罪行為の可能性あり!5つの犯罪を解説
客からのハラスメントがあまりにも悪質な場合、犯罪行為に該当するケースもあります。もし、客からの要求がエスカレートしたら、然るべき対応を取ることが必要がです。
こちらでは、悪質なクレームが犯罪に該当する可能性のある5つの罪を紹介していきます。
- 脅迫罪
- 恐喝罪
- 強要罪
- 威力業務妨害罪
- 不退去罪
どのようなケースが犯罪になり得るのか、確認してみてください。ただし、犯罪に該当するかどうかの詳細については、弁護士などに相談するのがおすすめです。
1. 脅迫罪
脅迫罪は、相手を脅して恐怖を与えることです。
例えば、以下のような行為は該当する可能性があります。
- 「殺すぞ」「殴るぞ」など相手に恐怖を与える言動をする
- 「店に火をつけるぞ」など危害を加えることを告知する
- 「ネットに晒す」といい、名誉に傷がついたりプライバシーを侵害したりする可能性があることを示唆する
従業員本人に対してでなく、その親族に対する内容も脅迫罪にあたります。刑罰は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金です。
2. 恐喝罪
恐喝罪は、相手を脅迫して財産を交付させることを指します。「脅迫行為+財産交付の要求」と考えるとわかりやすいでしょう。
例えば、以下のような行為は該当する可能性があります。
- 「ネットに晒さないで欲しければ明日までに30万円用意しろ」
- 「殴られたくなければ、今すぐ20万円支払え」
- 「慰謝料をよこさないと痛い目に遭うぞ」
脅迫や暴行を行う、またはほのめかして金銭を要求された場合には、恐喝罪が該当する可能性があります。刑罰は、10年以下の懲役です。
3. 強要罪
強要罪は「脅迫や暴力を用いて相手に義務のないことを行わせる」または「権利の行使を妨害する」ことを指します。
例えば、以下のような行為が該当する可能性があります。
- 土下座を強要する
- 謝罪文を要求する
- 担当者の辞職を求める
強要罪は、相手が応じなかった場合でも該当することがあります。強要罪は罰金刑がなく「3年以下の懲役」で、脅迫罪の「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」よりも重い罪です。
4. 威力業務妨害罪
威力業務妨害罪は、威力を用いて業務を妨害することを指します。
例えば、以下のような行為が該当する可能性があります。
- 大声を上げる
- 机をたたく・蹴る
その場にいる人たちに迷惑をかけたり、怖がらせたりして要求を通そうとする場合に該当する可能性が高いでしょう。刑罰は3年以下の懲役、または50万円以下の罰金です。
5. 不退去罪
不退去罪は、正当な理由が無く他人の敷地に居座ることを指します。
例えば、以下のような行為や発言が該当する可能性があります。
- 「客に向かって帰れとは何様だ」と居座る
- 「責任者が来るまで待たせてもらう」「閉店時間なんて関係ない」と発言する
何度お引き取りをお願いしても応じてもらえない場合は、該当する可能性が高いでしょう。刑罰は3年以下の懲役、または10万円以下の罰金です。
法律違反に該当するカスタマーハラスメントについては関連記事「法律違反に該当するカスタマーハラスメント5つの特徴!判例と確認すべきポイントを紹介」にて解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
客からのハラスメントに備えて企業が取るべき4つの対策
客からのハラスメントに対しては、企業として対応する必要があります。こちらでは、企業が取るべき4つの対策を解説していきます。
- マニュアルを作成して従業員に周知する
- 客からのハラスメントに関する研修を行う
- 被害者のストレス対策を行う
- 相談窓口を設置する
どんな対策を講じたらよいのか迷う企業担当の方は、ぜひ参考にしてみてください。
1. マニュアルを作成して従業員に周知する
客からのハラスメントを想定し、どう対応すればよいのかわかるようにマニュアルを作成しておきましょう。消費者が悪質なクレームを付けてきた際、何をするべきか明確であれば適切な対処が可能です。
マニュアルを作ったら社内で共有して、従業員全員が対処法を心得ておくことが重要です。顧客からの要求にはさまざまなパターンがあるので、対応フローを作成しておくとよいでしょう。
2. 客からのハラスメントに関する研修を行う
客からのハラスメントに対するマニュアルが完成したら、研修を行っていつでも対応できるようにしておきましょう。マニュアルを読んだだけでは、いざというとき行動に移せないことがあるからです。
さまざまな顧客のハラスメントを想定したり、実際にあったケースを取り入れたロールプレイングなどを行いましょう。研修は定期的に行って、客からのハラスメントへの対処法について確認することが重要です。
3. 被害者のストレス対策を行う
客からのハラスメントは、顧客に対して策を講じるだけでなく、従業員にも配慮する必要があります。悪質なクレームに対応をした従業員は、人により大小はあるにしても心にダメージを受けるものです。
企業は、ハラスメントを受けた従業員がカンセリングを受けられるよう環境を整える義務があります。もし、心に傷を負った従業員を放置してしまうと、事業主が責任を問われることもあります。
企業側は顧客対応だけでなく、従業員のストレス対策にも取り組むことが重要です。
4. 相談窓口を設置する
労働者が、客からのハラスメントに悩んだときの相談窓口を設置しておくことが大切です。
客からのハラスメントにはさまざまなケースがあるため、対応が正しいのか迷うこともあるでしょう。迷ったり悩んだりした従業員に対して、ノウハウをもった担当者から適切なアドバイスを受けられる体制を整えておくことが必要です。
相談窓口の設置は、企業が客からのハラスメントに対処する機能を強化したり、従業員の心理的負担を緩和したりするのに有効です。
カスタマーハラスメントの相談窓口については、関連記事「【保存版】企業が使えるカスタマーハラスメントの相談窓口3選【社内の対策も紹介】」にて解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
客からのハラスメントを防ぐために準備しておくこと
顧客からのハラスメントは、いつ起こるか予測できません。普段から、クレームに対応できる体制を整えておくことが大切です。ここでは、具体的な方法を4つに分けて解説していきます。
- 悪質なクレームに対するフレーズを決めておく
- 1人で対応しない体制を作る
- 記録を取れるようにしておく
- クレーム情報を社内で共有する
自社内で、ハラスメント対策を強化するための参考にしてみてください。
1. 悪質なクレームに対するフレーズを決めておく
悪質なクレームを受けたときに、どのように発言したらよいのか決めておくとよいでしょう。その場しのぎで曖昧な発言をするのではなく、毅然とした対応を取れるようにすることが大切です。
例えば、以下のようなフレーズがあります。
- 迷惑行為→「止めないのであれば、警察を呼びます」「強要罪に当たります。これ以上続けるのであれば弁護士を通じて対応します」など
- 金品を要求する→「上司に確認して後日回答します」「誠意とは何を差しているのか、はっきりおっしゃってください(金品要求に対する具体的な発言は法的手段を取りやすいため)」
起こりうるハラスメントに対する具体的なフレーズを知っていると、毅然とした態度で対応できます。顧客のクレームにはさまざまなパターンがあるので、各々のケースで有効なフレーズを確認したい場合は、弁護士などに相談するのもおすすめです。
2. 1人で対応しない体制を作る
顧客のハラスメントを受けたときは、1人で対応しない体制を整えることが大切です。必ず複数人で対応できるようにしておき、対処しきれないときやいざというときは、いつでも上司に相談できるようにしておと安心です。
客からのハラスメントは「どんなことを言われたのか」「どんな態度だったか」などを記録しておくことも必要です。1人では顧客対応と記録を同時にできないため、複数人で対処できるようにしておきましょう。
3. 記録を取れるようにしておく
客からのハラスメントに対し、然るべき対処をするためには記録を取っておくことが必要です。また、相手に記録することを伝えることで、迷惑行為が収まる可能性もあります。
例えば「録音させていただけますか?」「お客様のご意見を理解するため、書面にて記録をとってもよろしいですか?」など、確認するだけで相手が引き下がることもあります。
悪質なクレームはいつ発生するかわからないため、いつでも録音や記録ができるよう、録音機材やノートを用意しておくと良いでしょう。
4. クレーム情報を社内で共有する
クレームが有った場合、どんな内容も社内で共有しておきましょう。客からのハラスメントには、さまざまなパターンがあります。
クレームでも、商品に対する貴重な意見であることもあるでしょう。また、最初は意見を言うだけだったのに、だんだんエスカレートしてハラスメントに発展するケースもあります。
実際に起こったことはケーススタディとして参考になります。小さなクレームでも、社内で共有できる体制づくりが大切です。
まとめ
客からのハラスメントは会社として適切に対処することが大切です。悪質なクレームはさまざまなケースがあるので、企業でもマニュアルや研修を行い従業員全員で対策しておくとよいでしょう。
もし、客からのハラスメントへの対処法に悩むなら、弁護士に相談するのがおすすめです。「オンライン顧問弁護士」では、30分無料体験を実施しています。社内のマニュアル作りや従業員の相談窓口などに悩んでいる方は、お気軽にご利用ください。