「訴えられるかもしれない時、会社としてどのような行動を取ればいいか」
「訴えられないよう対策できることはないか」
「弁護士に相談したいが、人脈がなく困っている」
取引先や顧客から訴えられるかもしれない時に、対応方針が固まっていないことが原因で、大きな不安に思うことがあるのではないでしょうか。
たとえ「訴えられるかもしれない」という状況に陥っても、真摯に対応すれば和解が成立したり、要求を取り下げてもらえたりする望みがあります。しかし企業によっては裁判対応の経験が浅く、どのような行動を取れば良いかわからないケースがあります。
そこでこの記事では、
- 企業が訴えられるかもしれない状況
- 訴えられると生じる不安
- 取るべき行動
- 不安に備えてできること
などを解説します。
自社の人員だけでは解決が難しい場合には、弁護士などの力も借りることが大切です。問題の早期解決につながる方法が見つかる内容となっているので、ぜひ最後までご覧ください。
【ケース別】企業が訴えられるかもしれない4つの状況
企業が訴えられるかもしれない状況は、主に4つあります。
- 取引先企業から訴えられるケース
- 顧客から訴えられるケース
- 従業員・元従業員から訴えられるケース
- 知的財産権トラブルで訴えられるケース
ケースによっては自社に過失がないにも関わらず、一方的に訴えられることがあります。訴えられてしまう具体的な理由を、それぞれ確認していきましょう。
1. 取引先企業から訴えられるケース
取引先企業との付き合いが上手くいかず、訴えられることがあります。取引において事前に取り決めた金銭の授受ができなかったり、契約違反となる行為をしたりすることが、訴えられる原因となるのです。
例えば次のようなケースで、取引先から代金請求や損害賠償請求の裁判を起こされるケースがあります。
- 契約通りに代金を払えなかった
- 納品物に不備があった
- 契約内容を一方的に破った
取引上のトラブルの中でも、下請け企業への不当な対応は「下請法」の違反行為です。下請法違反で生じる不安は、取引先から訴えられることだけではありません。
公正取引委員会による処分や、刑事罰を受ける可能性もあり、企業の信頼に大きな悪影響をもたらす原因となります。
2. 顧客から訴えられるケース
商品の購入者や、サービス利用者などから訴えられるケースです。訴えられる理由となるのは、以下のようなトラブルです。
- 説明義務違反
- クーリングオフトラブル
- 医療・美容施術中などにおける事故
- 不良品や未着に関するトラブル
本来は本格的に訴えられる前に、話し合いによる解決が理想です。しかし顧客側が感情的になっていると、話し合いがスムーズに進まず訴訟を起こされてしまう恐れがあります。
企業側に過失がなくても、過剰なクレーマーからの不当な主張で訴えられる可能性もあります。訴訟のリスクを抑えるためにも、顧客対応には十分注意しましょう。
3. 従業員・元従業員から訴えられるケース
従業員との間でトラブルが起こり、訴えられることがあります。訴えてくるのは、現役で働く社員や、過去の退職者などです。
- 給料や残業代の未払い
- 合理性の低い事情での解雇
- セクハラ・パワハラ
- 労災かくし
このような出来事が、訴訟の原因となります。1人の要求に安易に応じると、他の従業員も「簡単に要求が通る」と感じる恐れがあるので、安易な対応は禁物です。
問題を沈静化できなければ、企業活動に大きな悪影響となる可能性があります。従業員・元従業員にとの裁判では、企業として慎重に対応することが大切です。
4. 知的財産権トラブルで訴えられるケース
知的財産権は、創作物やアイディアを保護し、盗用されるのを防ぐための権利です。知的財産権の中でも、以下の4つの権利は産業財産権に分類され、特許を根拠として訴えられる可能性があります。
- 特許権
- 実用新案権
- 意匠権
- 商標権
具体的には、次のような行為が知的財産権の侵害に該当し、訴えられるきっかけになります。
- 他社のロゴとよく似たデザインのマークで商品を作った
- 他社が特許を取得した内容と同等の技術で製品を開発した
- 従業員が前に勤めていた企業の技術を流用した
意図的に他社のアイディアを真似たわけでなくても「類似している」というだけで、権利の侵害になり得ます。「相手のロゴを知らなかった」と主張しても、権利侵害であることに変わりはないので、正しく理解することが重要です。
会社が訴えられると生じる3つの不安
「訴えられるかも」という状況を放置するのは厳禁です。訴えられると次の3つの損害が生じるためです。
- 企業のイメージが悪化する
- 金銭的な損失を負う
- 従業員のモチベーションが低下する
訴えられたことが原因で、企業活動が円滑に進まなくなってしまう恐れがあります。「訴えられるかもしれないが、積極的に対応すべきか分からない」とお考えの企業担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
1. 企業のイメージが悪化する
自社が訴えられると、顧客や取引先からの企業イメージが悪化する不安があります。「あの会社が訴えられた」と聞くと、ネガティブな印象を持つ方が多いためです。
裁判で大々的に「この会社は詐欺をしている」などの主張をされると、事実に限らず周囲からの信用を失うきっかけになります。
マスコミの報道や匿名掲示板への書き込みなどで、事実とは異なる風説が流れることもあるでしょう。企業側が全面的に悪いわけでなくても、真偽を確かめることなく噂話を信じる人がいるのです。
風評被害を受けると、企業の商品やサービスを利用しようか検討していた見込み客が他社に流れたり、常連客を失ったりする恐れがあります。
2. 金銭的な損失を負う
訴えられた結果、高額な賠償金の支払いを命ぜられ、会社の財務状況が悪化するリスクがあります。裁判の内容によっては、何千万円もの金額を請求されることがあります。1件ずつでは少額の賠償でも、複数人から同時に訴えられ、支払い総額が膨らむケースも少なくありません。
裁判の内容に納得がいかず控訴・上告する場合は、再審理を求める企業側が手数料を支払うこととなります。規模の小さな企業の場合は、訴えられた際の金銭的な負担が、経営状態に悪影響をもたらすでしょう。
3. 従業員のモチベーションが低下する
裁判で訴えられた企業で働くのを苦痛に感じ、従業員のモチベーションが低下することが考えられます。勤め先の企業が訴えられた側となると「家族や知人に心配をかけてしまうのでは」「業績に響くのではないか」といった不安が頭をよぎるものです。
訴えられたことに関する、憶測や風評被害を含む報道は、従業員自身の目にも入ってしまうでしょう。モチベーションが低下すると、活発な企業活動ができなくなったり、退職を検討する従業員が現れたりする損失に繋がります。
「訴えられるかも」と不安な状況でとるべき3つの行動
自社が訴えられるかもしれないという兆候があったら、次の3つの行動をとってみてください。
- 事実確認をする
- 弁護士に相談する
- 和解の提案を検討する
それぞれ詳しく解説していきます。
1. 事実確認をする
「適切に対応していただけなければ訴えます」と警告を受けたり訴状が届いたりしたら、まずは落ち着いて事実確認することが大切です。
過剰なクレーマーが「訴えてやる」と警告してくる場合、一時の感情に任せているだけで根拠が乏しい場合があります。相手の主張に妥当性がなければ、反論や相手への事情説明をすることで解決するケースもあるでしょう。
そして訴状が届いた際、内容に心当たりがなくても、中身を確認することなく無視をしてはいけません。訴状の内容に目を通さないと、書類に書かれた期日に自社側の人間が不在のまま裁判が進み、訴えた側の主張が認められてしまうのです。
また、相手の主張内容をしっかりと把握することで、対応の方向性や必要な行動が見えてくるでしょう。「訴えられるかも」と感じたら、事実確認をしっかり行うことが重要です。
2. 弁護士に相談する
企業で顧問弁護士を契約していたら、早い段階で相談することをおすすめします。「訴えられるかもしれない」という状況で、どのような行動を取るべきかアドバイスをもらったり、以下のようなサポートを受けたりできるためです。
- 書類作成の代行
- 出頭の代行
- 裁判の進行を管理
- 証拠などの資料集め
弁護士に相談すれば「法務部がない」「裁判の経験がない」という企業でも、不安なく対応できます。顧問弁護士がいない企業は、まず無料相談を行っている弁護士に相談してみましょう。
3. 和解の提案を検討する
裁判に進んでしまったら、和解による解決を提案する選択肢もあります。和解とは、当事者同士で譲歩し、争いを解決することです。
和解で解決するメリットは、主に4つあります。
- 「訴えられて負けた企業」というレッテルを貼られない
- 双方の言い分を汲み取ってもらえる
- 尋問や上級審がなくスピーディに解決する
- マスコミによる過度な報道の抑制を期待できる
当事者が申し出たり、裁判官からの提案を受けたりすることで和解が成立します。民事事件の第一審では、和解が37.1%を占め、解決の手段として多く用いられていることが分かります。(参考:最高裁判所「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」)
示談金や和解条件の提案で悩んだら、速やかに弁護士に相談することが重要です。
「訴えられるかも」という不安に備えてできること3選
「訴えられるかもしれない」という事態に直面してから行動を起こすのでは、対応が後手に回ってしまいます。そこで本章では「訴えられるかも」という不安に備えてできることを、3つ紹介します。
- 対応マニュアルを作る
- 法務部や顧問弁護士を用意する
- 損害賠償保険に加入する
- 契約書の内容を正確に把握する
- 労務管理を強化する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 対応マニュアルを作る
対応マニュアルを設置することで「訴える」と警告を受けても、企業で統率の取れた対応を取れるようになります。取引先や顧客から警告を受けた際、一般の従業員に判断を任せることなく、マニュアルに沿った行動を心がけさせましょう。
マニュアルを作る目的は、誤った対応で不利な状況になるのを防いだり、最善の行動を選択したりできるよう対策するためです。マニュアルで法務部や上司への報告フローなどを言語化し、どの従業員でも一律の対応を取れる社内体制を構築することが理想です。
2. 法務部や顧問弁護士を用意する
法務部は、企業の法的トラブルを未然に防ぐために存在する部署です。特に法的なトラブル発生の懸念がある企業は、法務部の新設を検討してみてください。契約書のチェックを強化したり、法的トラブル発生時の社内窓口になったりするのに、法務部が活躍します。
しかし規模の小さな企業では、十分な法務知識を持った社員が在籍しないことが考えられます。自社で法務部の設立が難しい場合は、顧問弁護士と契約するのがおすすめです。顧問弁護士は、法律に関係するアドバイスやサポートをしてくれる、企業の主治医のような存在です。
また法務部があるからといって、弁護士を頼れないわけではありません。法務部と顧問弁護士が連携して、法律に関する課題に対応している企業も多数あります。自社の力だけでは解決が難しいと感じたら、積極的に顧問弁護士を頼りましょう。
3. 損害賠償保険に加入する
訴えられて賠償金の支払命令を受けた際に備えるため、早い段階で損害賠償保険に加入しておきましょう。万が一高額な賠償請求を受けても、条件を満たせば保険金で支払いをカバーできます。
特に保険でカバーすべきなのは、発生頻度が低く、支払い金額が高額になるリスクがある内容です。例えば飲食店なら食中毒、建設会社なら工事中の事故といったトラブルに備えられます。
あらゆる賠償リスクを包括的にフォローできるサービスもあるので、まずは気になる保険商品について調べてみましょう。
4. 契約書の内容を正確に把握する
契約を交わす際は、記載されている内容を正確に把握してください。どのようなケースで訴えられる可能性があるのか、契約違反の際はどの程度の賠償金を請求されるのかなどが書かれているためです。
気付かぬうちに取り決めを破っていたといったことがないよう、契約を意識した取引を心がけましょう。口約束で契約書を作成しないまま取引を行ってしまうと、問題が発生したときに解決できなくなってしまいます。
自社に不利益が生じる条文があれば、変更してもらったり特約を設けたりする対応が必要です。
5. 労務管理を強化する
労務管理に懸念点がある企業では、体制の強化が重要です。正しく給料を計算したり、労災の原因をなくしたりして、訴えられるリスクを減らしましょう。
経営陣の目が届かないところで、サービス残業の強要やハラスメントが起こっている可能性があります。問題が明らかになった際は、速やかに社内調査をして改善に努めましょう。
「訴えられるかも」という不安を解消するためオンライン顧問弁護士へご相談ください
「訴えられるかも」と不安な状況でも、スピーディかつ適切な対応を取らなければなりません。しかし、企業の担当者や法務部だけでは法的に関する知識や経験が不足し、対応に困ってしまうこともあるでしょう。
不安を解消するには、日頃から付き合いのある顧問弁護士へ、速やかに相談することをおすすめします。
「オンライン顧問弁護士」であれば、どこからでもオンラインで法律相談が可能です。「訴えられるかも」という事態でも不安なく行動できるよう、顧問弁護士の力を借りてみてはいかがでしょうか。