Pickup 2023.07.31

なぜ裁判をするのか?勝訴後の手続きと訴訟前に検討すべきこと

裁判のゴールは判決だけではない!勝訴後の手続きと訴訟の前に検討すべきこと

目次

裁判に勝っただけでは終わらない
判決を得た後に行うこと
訴訟の前に検討しておくべきこと
最後に

争いが起きたとき、それがどうしても話し合いでは解決しないなら裁判をするしかない、という考えは皆様の頭の中に常識としてあるかと思います。しかし、なぜ解決できない問題があるときに裁判を行うのでしょうか。

言い換えれば、裁判で判決を得ると、どのような良いことがあるのでしょうか。この点をしっかりと理解しておかないと、長い時間と多大な費用をかけて行った裁判が無駄になってしまうこともあります。

そこで今回は、裁判を行うことの意味について解説します。

裁判に勝っただけでは終わらない

裁判しただけでは終わらない

通常、裁判に勝っただけで物事は終わりません。判決が出たとしても、お金を払わない人は払いませんし、建物に居座る人は居座ります。稀に、裁判所の判断が出た以上は潔くそれに従うという方も居ますが、そういった柔軟な方が当事者であれば、判決に至るより前に和解で物事が終わっているのが通常だと思います。

なお例外的に、勝訴判決が出れば、それだけで目的が達成できるケースも無いわけではありません。例えば土地を買ったにも関わらず売主が登記を移してくれないといった場合、所有権移転登記の手続きを求めて裁判を行います。この裁判で勝訴判決が出れば、売主が登記手続に同意したものと同じように扱われますので、すぐに登記手続きを行うことができます。もっとも、このようなケースはごく僅かです。

判決を得た後に行うこと

強制執行・公正証書

裁判に勝っただけでは終わらないということであれば、なぜ裁判を行うのでしょうか。それは、判決が強制執行の「パスポート」になるからです。

強制執行については、ある程度イメージが沸く方も多いのではないでしょうか。不動産を差し押さえて競売を行ったり、預金債権を差し押さえて支払いを受けたり、建物に居座る人を強制的に追い出したり、といった方法で、裁判所が権利を強制的に実現する手続きです。

民事執行法では、強制執行の手続を開始するために「債務名義」というものが必要とされています。債務名義は、いわば強制執行手続のパスポートです。契約書があるなどして、どれだけ債権の存在がはっきりしていても、債務名義が無ければ強制執行を行うことは(ごく一部の例外を除いて)できません。逆に、債務名義さえあれば、その内容が妥当かどうかの判断は行われることもなく強制執行がスタートします。

裁判によって得られる判決は、この債務名義の代表例とされています。つまり、判決を得ることの目的は、「強制執行を行うためのパスポートを手に入れる」ということにあります。たまに、勝訴判決を得さえすれば、裁判所が勝手に強制執行まで行ってくれる、全て争いは解決する、と勘違いされる方がいらっしゃいますが、訴訟と強制執行は手続として別物です。

強制執行まで行うと手続費用で赤字になってしまう、という場合には、このパスポートを使わないこともありますし、「強制執行が嫌なら分割でもいいので任意に支払ってくれ」と、相手に持ち掛けることもあります。

訴訟の前に検討しておくべきこと

訴訟する前に検討すること

ここまで、訴訟と強制執行(回収)は別の段階であることをご説明しました。このことが理解できると、1つのリスクに思い当たることになります。それは、被告による強制執行の回避です。

例えば、被告は、訴訟中に敗訴が濃厚となると財産を隠す可能性があります。強制執行を行う場合、対象となる財産は申立人側(=原告側)が特定しなければいけませんので、財産を隠されると執行ができません。ずる賢い被告であれば、訴訟前や訴訟中に不動産を売却してしまったり、預金口座からお金を移動させたりすることが可能なのです。そうすると、原告の側は裁判に勝っても回収ができないことになってしまいます。

このような被告の行為を防止するため、法律は幾つかの手法を用意しているのですが、その内の1つが仮差押えというものです。仮差押を行うと、預金口座については凍結され、不動産については所有権を移転しても、強制執行手続上は無かったものと扱われることになります。したがって、被告としては財産を逃がすことができなくなるのです。

仮差押は、請求する権利の存在について疎明(確実ではないものの「一応確からしい」という程度の立証)があれば認められるため、法律上のハードルは高くありません。しかし、その分不当な仮差押がなされる可能性があることも考慮して、例えば預金口座を仮差押する場合には、同時に請求する金額の20~30%程度の担保金を納付するよう求められます。訴訟が終われば返還されるのが通常ですが、一旦は持ち出しとなるので費用面でのハードルは中々高いものがあります。したがって、費用面のハードルと、財産が逃がされるリスクがどの程度あるかという事を考えて、仮差押を行うか検討することになります。

最後に

最後に

以上のように、訴訟の事だけを考えていると、結局のところ権利が実現できずに終わるということになりかねません。弁護士に訴訟を依頼する際には、訴訟が始まる前、訴訟が終わった後の方針もしっかりと確認することをお勧めします。

特に金銭請求を行う場合は、訴訟が終わったとき被告に財産が無ければ、勝訴判決は絵に描いた餅となってしまいかねません。被告に財産があるのか、その財産を仮差押えしておく必要はあるのか、訴訟後の強制執行にどの程度の費用が掛かるのか、といった点は十分に検討し、理解した上で裁判を行う必要があります。

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