カスハラ 2021.11.24

【解決】カスタマーハラスメント被害で警察に頼れるのか?7つのケースと対処法を紹介

「顧客からの迷惑行為に困っている」
「企業ができるカスタマーハラスメント対策を知りたい」
「どのようなときに警察に頼るべきかわからない」

顧客からの悪質なクレームや嫌がらせのような行為である「カスタマーハラスメント」に悩んでいませんか?従業員に危害を与えるような行為を受けた場合、警察に相談できるケースがあります

しかし、どのような場合に警察に助けを求めたら良いかわからず、通報を躊躇してしまうこともあるでしょう。この記事では、いざというとき判断に迷わないように、下記の内容を解説していきます。

カスタマーハラスメント対応で警察を頼るメリット
・警察を頼れるケース
・警察に頼らず企業で対応する方法

大切な従業員を守るだけでなく、会社の名誉を守るためにもカスタマーハラスメントへの対応方法を学んでおきましょう。また、警察が介入できない場合の相談先も紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

カスタマーハラスメントは警察に相談できる

カスタマーハラスメントは警察に相談できる

カスタマーハラスメントに事件性がある場合は、警察に相談するのがおすすめです。例えば、顧客が攻撃的な態度をとったり居座り行為をしたりした場合は、犯罪が成立することがあり警察が対応してくれます。

企業には従業員の安全を守る義務があるので、即座に状況判断して対応することが重要です。警察への通報が遅れ、従業員が危険な目に遭ってしまうことがないようにしましょう。

ただし、警察は頼りになる一方で、介入できない事例もあります。そのため、どのようなケースが警察に相談できるか理解しておくことが重要です。

カスタマーハラスメント対応で警察を頼るメリット【即時性】

カスタマーハラスメント対応で警察を頼るメリット

嫌がらせ行為をする顧客への対応で警察に頼るメリットは、即時性があることです。犯罪にあたる行為を顧客が行った場合、110番すればすぐに警察が駆けつけ、事態の鎮静化を図ってくれます。

弁護士や行政の窓口も頼りにはなりますが、その時行われている犯罪行為を即時に解決はできません。警察が対応することで短時間で鎮静化でき、従業員の安全も守れます。

顧客とのトラブルが犯罪行為に発展してしまったときは、迅速な対応が重要です。警察が持つ即時性を活かすために、必要なときに通報を決断できるようにしておしましょう。

カスタマーハラスメントで警察を頼れる7つのケース

カスタマーハラスメントで警察を頼れるケース

カスタマーハラスメントの内容によっては、刑法に触れる可能性があります。とはいえ、どのようなケースが犯罪になるのかわからないという方も多いでしょう。

ここでは、カスタマーハラスメントが該当しやすい犯罪行為を7つ紹介します。

  1. 恐怖を与える【脅迫罪】
  2. 理不尽な要求をする【強要罪】
  3. 金銭を要求する【恐喝罪】
  4. 業務を妨害する【威力業務妨害罪】
  5. 居座り行為をする【不退去罪】
  6. 暴行する【暴行罪】
  7. 名誉を傷つける【名誉毀損罪】

これらの行為が、どのような犯罪に該当するかについても解説していきます。

1. 恐怖を与える【脅迫罪】

顧客が従業員を脅迫して恐怖を与えた場合、脅迫罪が認められることがあります。下記の5つのうち、どれか1つでも脅かすことがあれば脅迫罪に該当します。それぞれどのような表現が使われるかについても、確認しておきましょう。

  • 生命:「殺すぞ」
  • 身体:「痛い目に遭わせてやる」
  • 自由:「このまま帰れると思うなよ」
  • 名誉:「ネットに晒すぞ」
  • 財産:「壊してやる」

これらは、「危害の告知」と呼ばれます。口頭に限らず、手紙やメールなどの文章で告知したケースでも、脅迫罪として認められます

2. 理不尽な要求をする【強要罪】

顧客の脅迫によって従業員が恐怖に怯え、不本意な行動してしまうケースは強要罪となります。脅迫罪との違いは、要求を受けた従業員の行動が伴うかどうかです。

強要罪が認められるのは、顧客が土下座や謝罪文の作成といった理不尽な要求をした場合です他にも脅迫により義務のない行為をさせたり、権利の行使を妨害したりしたら強要罪と判断されやすくなります。

これは、従業員に要求を聞き入れてもらうために本人だけでなく、その家族への危害を告げた場合も対象です。

3. 金銭を要求する【恐喝罪】

恐喝罪は脅迫行為に加え、相手の財産を奪ったケースが該当します。例えば「殴られたくなければ、20万持ってこい」「明日までに50万用意しないと殺すぞ」といった表現がよく使われます。

このような金銭の要求によって犯罪と判断するには、常識の範囲を超えているかどうかが重要です。つまり、返金保証の範囲内での金銭の要求は、顧客の口調が荒々しかったとしても恐喝罪の対象になりません。

また、脅迫と理不尽な金銭の要求をされたとしても、実際に支払わなかった場合も恐喝罪とはならず、恐喝未遂罪という別の罪となります。

4. 業務を妨害する【威力業務妨害罪】

顧客の言動が業務に影響を与えるケースは、威力業務妨害罪に当たります。例えば、下記のような行動を顧客が行った場合が対象です。

  • 従業員を怒鳴りつける
  • デスクを蹴ったり叩いたりする
  • 迷惑電話を繰り返す
  • 大人数で押しかける
  • 爆破予告をする

威力業務妨害罪には未遂罪がないので、実際に業務が妨害されたかどうかは関係ありません。つまり、顧客が業務に支障をきたすような行為に至った時点で、罪に問われることになります。

5. 居座り行為をする【不退去罪】

不退去罪は、顧客による不当な居座り行為が対象です。ただし、不当な居座り行為とそうでないものとの線引きが難しく、ケースによっては犯罪と認められないことがあります。

そのため、顧客による居座り行為が不当と認められるように対策することが重要です。具体的には、顧客に対応可能な時間を伝え、長時間居座られた場合に退去を要求します。

顧客に退去を求めたにもかかわらず、立ち退くそぶりを見せなかったり反抗してきたりした場合は、不退去罪となる可能性が高くなります

6. 暴行する【暴行罪】

顧客が従業員に暴行した場合は、暴行罪が認められます。暴行とは、殴る・蹴るなどの接触を伴う攻撃だけではありません。例えば、顧客が従業員に向かって石を投げつけたり、唾液を吐いたりする行為も暴行に該当します。

つまり、体が接触したかどうかは関係なく、相手が怪我をする恐れのある攻撃をした時点で犯罪行為になるのです。そのため、顧客が投げた石が従業員に当たらなかったとしても、罪に問われることとなります。

7. 名誉を傷つける【名誉毀損罪】

不特定多数の人に向け、特定の人あるいは会社の社会的評価を低下させる内容を公表したら、名誉毀損罪に該当します。

名誉毀損罪が認められるために重要なのは、内容が「主観ではなく事実であること」です。「性格が悪い」「視線が気持ち悪い」といった意見は主観なので「侮辱罪」に該当します。

名誉毀損にあたる事実として、下記のような表現が挙げられます。

  • 「Aさんは〇〇横領事件の犯人だ」
  • 「Bさんは専務と不倫をしている」
  • 「C社は詐欺行為を隠蔽している」

ただし「不正を暴く」など公益が目的のケースは、名誉毀損には当たりません。あくまでも、特定の人や会社の社会的評価を下げる目的で公表される事実に限られます。

警察に頼らず企業でカスタマーハラスメントに対応する方法6選

警察に頼らず企業でカスタマーハラスメントに対応する方法

カスタマーハラスメントに遭遇したとき、事件性がないケースは警察が介入できません。そこで、ここでは悪質な行為をする顧客に対して企業が実践できる対策を6つ紹介します。

  1. 組織で対応する
  2. 対応時間を限定する
  3. 対応を記録する
  4. 社内で情報共有する
  5. 法的責任を認めない謝罪の仕方をする
  6. 念書や謝罪文は作成しない

それでは、順番に見ていきましょう。

1. 組織で対応する

カスタマーハラスメントの対応は、組織で行いましょう。たとえ顧客の担当者が決まっていたとしても、悪質なクレーマーには複数人で対応するのがおすすめです。

この場合、相手方よりも多い人数で対応するのがポイントです。こちらの人数が多いことで、相手方は強く出にくくなります。また、担当者の主観による回答を避けられるので、組織内での対応方法の偏りを防止できるもメリットです。

2. 対応時間を限定する

顧客が来社するあるいは電話をかけてくるときは、対応可能な時間を伝えるようにしてください。顧客の悪質行為が犯罪と認められるには、予め対応時間を限定しておくことが有効だからです。

規定の時間になり、引き取りを願っても顧客が不当に居座った場合は、業務妨害罪や不退去罪になります。電話の場合は、顧客が長時間の対応を強いたり何度も嫌がらせ行為を行ったりすることで、業務妨害罪に該当することがあります。

3. 対応を記録する

顧客とのやり取りは、必ず記録しましょう。万が一警察に頼ることになったり裁判に発展したりした場合、記録した内容が証拠になるので、録音や録画をするのがおすすめです。

このとき、対応の記録をする旨を顧客に伝えなかったとしても、録音や録画のデータは証拠として利用できます。証拠として利用するよりも、相手方を牽制する目的が大きい場合は、記録する旨を予め伝えるのが有効です。

4. 社内で情報共有する

カスタマーハラスメントが発生したら、社内で情報共有しましょう。情報共有する際は、事例の内容を共有するのではなく、対応方法も記しておくのがおすすめです。

組織としての対応方法がわかれば、悪質なクレーマーに遭遇したときに担当者が悩むことなく対応できます。また、社内での対応方法の偏りが改善できるのもメリットです。

5. 法的責任を認めない謝罪の仕方をする

クレーマーから謝罪を求められる事例は、めずらしいことではありません。このとき、言われた通りの内容をそのまま認めるのではなく、法的責任を認めない謝罪の仕方を心がけましょう。

特に、明らかに顧客が悪質な場合は、謝罪の内容によっては自社が不利な状況を作ってしまうことになるので、注意が必要です。法的責任を認めないように、相手の時間をいただいたことや手間をとらせてしまったことなどに対して謝るようにしましょう。

謝罪には、相手方がヒートアップしてしまうのを防ぐ効果もあるので、手段の一つとして有効に使ってください。

6. 念書や謝罪文は作成しない

悪質な顧客に念書や謝罪文を求められたとしても、作成しないようにしてください。なぜなら、裁判所は書面主義だからです。カスタマーハラスメントが訴訟に発展しないようにするのは当然ですが、最悪のケースも考えておくのがおすすめです。

また、書面に残してしまうと、インターネットで拡散されてしまうリスクもあります。顧客に圧倒され、念書や謝罪文を書いてしまいたくなるかもしれませんが、基本的には拒否しましょう。

ただし、文書を作成しないことで身体や生命が脅かされる危険があるときは、安全を最優先にしてください。相手に脅されて文書を作成してしまった場合は強要罪に問える可能性があるので、すぐに警察に通報しましょう。

警察以外のカスタマーハラスメントの相談先

警察以外のカスタマーハラスメントの相談先

いざというときには警察に頼れますが、事件性がないケースは自社で対応することになります。悪質なクレーマーへの対応に不安があるなら、カスタマーハラスメントが発生する前に相談先を決めておくのが重要です。

ここでは、下記の3つの相談先を紹介します。

  1. 弁護士
  2. 保険会社
  3. 行政の相談窓口

それでは、順番に解説していきます。

1. 弁護士

最も一般的なカスタマーハラスメントの相談先は、弁護士です。警察とは異なり、カスタマーハラスメントが発生する前でも相談でき、法律に基づいた対処方法を示してくれます

また、カスタマーハラスメント対策として、社内研修やマニュアル作成をサポートしてくれる場合もあります。最悪のケースとして、カスタマーハラスメントが裁判に発展してしまっても対応してもらえるので、非常に心強いです。

ただし、カスタマーハラスメント対応の経験値は弁護士によって異なるので、実績を調べておきましょう。

2. 保険会社

カスタマーハラスメントに対応した保険に加入するのもおすすめです。毎月の保険料がかかるものの、加入者であればすぐに保険会社に相談できます

カスタマーハラスメントに発展する前の段階でも相談可能です。保険料と補償内容を吟味して納得出来る商品が見つかったら、カスタマーハラスメント被害に備えて加入しておきましょう。

3. 行政の相談窓口

行政の窓口に相談する選択肢もあります。現在は、行政への相談件数は少なく、マニュアルやガイドラインもありません。しかし、今後は相談できる体制が整っていくことが考えられます。

厚生労働省は2015年から悪質クレームに関する会議を開催しています。2021年7月には「第3回 顧客等からの著しい迷惑行為の防止対策の推進に係る関係省庁連携会議」の資料が公表されました。

資料によると、厚生労働省は2022年3月末までに企業向けマニュアルを作成する予定のようです。行政からマニュアルが公表されれば、間違いなく企業はカスタマーハラスメントに対応しやすくなることでしょう。

今後も厚生労働省を中心に、カスタマーハラスメントへの取り組みが活発になっていくことが考えられます。

厚生労働省の指針や今後の取り組みについて詳しく知りたい方は、関連記事「【2021年最新】カスタマーハラスメントに関する厚生労働省の指針は?企業が取るべき9つの対策を紹介」を参考にしてみてください。

まとめ

まとめ

事件性のあるカスタマーハラスメントを受けた場合は、躊躇せずに警察に通報しましょうただし、警察が介入できないケースもあるので、他の相談先も決めておくのがおすすめです。

カスタマーハラスメントの相談先は、弁護士が最も一般的です。弁護士なら刑事罰に問えない事例でも、法律に則ったアドバイスをしてくれます。また、カスタマーハラスメントが発生する前から相談可能なのもポイントです。

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