「カスハラに法的に立ち向かうにはどうすればいい?」
「法的措置で会社が不利益を被る可能性はある?」
「会社の力だけで法的措置は進められる?」
悪質なクレームや、嫌がらせ行為に悩んでいませんか?顧客によるあまりに理不尽な行動は「カスタマーハラスメント」と呼ばれ、法的措置で解決できる場合があります。
しかし真剣に法的措置を検討していても、どのような手続きをすれば良いのか分からず、なかなか行動ができずにいる方も多いでしょう。
そこでこの記事では、カスタマーハラスメントへ法律的な対応をしたいと考える企業担当者の方に向けて、次の内容を解説していきます。
- 法律違反に該当するカスタマーハラスメントの特徴
- 民事・刑事で法律的に立ち向かう方法
- カスタマーハラスメントに関する判例
- 法律的な対応をとる前に確認すべきポイント
- 法律的な対応をする際の相談先
カスタマーハラスメントは犯罪行為に該当するケースがあり、法律的な対応が可能です。法的措置を検討するほどのカスタマーハラスメントにお悩みの方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
法律違反に該当するカスタマーハラスメント5つの特徴
カスタマーハラスメントは、法律に照らし合わせると「刑法」に抵触する犯罪行為であるケースが多くあります。被害の内容が法律違反かどうか見分けるには、カスタマーハラスメントが次の5つの特徴に当てはまらないか確認してみてください。
- 脅迫・脅し
- 過剰な金品の要求
- 理不尽な行動を強要する
- 業務を妨害する
- 居座り行為
顧客による行動でも立派な犯罪行為であるため、法律的に対処できます。法律に抵触するほどのカスタマーハラスメントに悩まされていたら、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
1. 脅迫・脅し
脅迫や脅しは、脅迫罪に該当します。次の5つの対象に対して「危害を加える」と告知することが、法律上の脅迫行為です。
- 生命:「殺すぞ」など
- 身体:「殴るぞ」など
- 自由:「家に帰れると思うな」など
- 名誉:「マスコミに広める」など
- 財産:「お金を奪うぞ」「建物を燃やすぞ」など
顧客から口頭で直接的に言われるだけでなく、メールや文書で告げられる場合も脅迫罪となります。脅迫罪を見極めるのに、告げた内容を実際に行動に移したかは争点になりません。
顧客の言動により従業員が恐怖心を感じるに値することが、脅迫罪が認定されるポイントです。
2. 過剰な金品の要求
過剰な金品を要求するカスタマーハラスメントも、恐喝罪として法律違反となります。脅迫行為や暴行で従業員を怖がらせ、さらにお金や財産を脅し取る行為が恐喝です。
例えば顧客による次の主張は、恐喝に該当します。
- お詫びとして明日までに100万円払わなければ痛い目に合わせる
- 上司にクレームを入れられたくなければ無料で商品をよこせ
- 慰謝料を払わなければSNSに書き込む
「慰謝料」や「賠償」といったいかにも強制力があるかのように感じる言葉を使われても、トラブルの内容に対して不相応な金額の要求であれば、恐喝罪が成立します。
企業側が実際に金品を渡したら恐喝罪、渡す前に警察へ通報するなどしたら恐喝未遂罪です。
3. 理不尽な行動を強要する
従業員に、理不尽な行動を実行するよう要求するケースが想定されます。本来遂行の義務がないことを、脅迫や暴力を用いて無理矢理に実行させられたら、強要罪で罪に問えるでしょう。
脅迫や暴力で従業員に畏怖を感じさせ、次のような行動を強いてきたケースは、強要罪の可能性があります。
- 土下座させる
- 反省文を書かせる
- 書面にサインさせる
従業員本人への言動以外に、親族などへの危害をほのめした上で行動を要求することも強要行為です。従業員が強要された行為の実行を拒んだとしても、強要未遂罪として罰せられることがあります。
4. 業務を妨害する
いわゆる営業妨害行為は、威力業務妨害罪に該当します。威力業務妨害罪となり得る行為の例は以下の通りです。
- 机や椅子を蹴る
- 大声を出す
- 集団で押しかける
- 執拗に電話をかけてくる
実際に業務が妨害されたり、損害が発生したりしたかは争点とはなりません。その行為が原因となり、結果として業務ができなくなる可能性があれば、威力業務妨害罪と判断されます。
5. 居座り行為
店内や事務所に正当な理由なく居座る行為は、不退去罪となります。
- 店頭で延々とクレームを付ける
- 責任者が出てくるまで帰らないと主張する
- 要求が通らないからといって座り込みをする
不退去罪が成立するポイントは、帰ってほしいという要求を相手へ明確に伝えることです。「お引き取りください」とはっきり言葉にして、複数回にわたり警告しましょう。
ボイスレコーダーなどで記録をとっておくと、万が一裁判になった際に不当性を主張するのに役立ちます。
【刑事】カスタマーハラスメントの法律的な対応法
カスタマーハラスメントに対し法律的な手段で対応するなら、刑事事件か民事事件のどちらで対応するか選択することになります。ここでは、刑事事件としてカスタマーハラスメントに法的措置をとる方法を紹介します。
刑事訴訟は犯罪に該当する行為をした顧客に対し、懲役刑や罰金刑といった刑罰をもって問題解決したいケースで有効な手段です。カスタマーハラスメントは脅迫罪や威力業務妨害罪といった刑法以外にも、次のように様々な法律から違法性を問われます。
- 銃刀法違反:顧客が刃物を用いて脅してきたなど
- 詐欺罪:虚偽の内容を根拠に金品を要求してきなど
刑事事件として手続きを始めるには、まず警察に告訴状を提出し、犯罪行為を知らせます。告訴状の内容をもとに警察が犯人を逮捕し、取調べによりで必要性が認められると起訴(刑事裁判に進むこと)されるのです。
「略式起訴」といって、裁判を省略して罰金刑などを言い渡す場合もあります。ただし捜査や裁判の結果罪が認められないと、ハラスメント行為を行った顧客への刑事罰は加えられません。
【民事】カスタマーハラスメントの3つの法律的な対応法
民事事件として取り扱うと、主に3つの選択肢からカスタマーハラスメントに対応できます。
- 民事調停
- 仮処分の申し立て
- 民事訴訟
カスタマーハラスメントを民法に照らし合わせて考えることが、刑事事件との大きな違いです。
刑事事件として立件するのが難しい場合や、穏便にカスタマーハラスメントを解決したい場合は、民事事件としての法的措置を検討しましょう。
1. 民事調停
民事調停は、裁判官や調停委員といった第三者を間に立て、話し合いをする手続きです。裁判のように勝敗をはっきりと決めるのではなく、お互いの合意点を探すことでカスタマーハラスメント問題の解決を目指します。
カスタマーハラスメントの解決に、民事調停を用いるメリットは以下の通りです。
- 訴訟よりも費用が低額
- おおむね3か月以内とスピーディに終了する
- 非公開の場で秘密を守られる
訴訟よりも簡単な手続きで、法的措置でありながらも話し合いによる円満な解決を望んでいる場合には、民事調停が最適です。
2. 仮処分の申し立て
裁判所から、問題となる行為の禁止命令などを出してもらう手続きが仮処分です。本格的な訴訟の手続きを踏むと「企業側への不利益が膨らんでしまう」といった際に、仮の処分を下してもらって対応します。
通常の裁判では解決までに何年も時間がかかることがあるため、カスタマーハラスメントを早く解決したい時に有効な法的措置です。
3. 民事訴訟
民事訴訟は、裁判による解決方法です。企業と顧客の双方から裁判官に言い分を伝えたり、証拠をもとに事実確認をしてもらったりして、判決を受けます。
民事裁判は警察や検察を挟むことなく、あくまで個人間の争いごとを解決する手段です。
- カスタマーハラスメントで主張している言い分が通らないことを裁判で確認する
- 民法を元に「会社への名誉毀損に対する損害賠償」などを要求する
このようなケースで、カスタマーハラスメントの解決を期待できます。
カスタマーハラスメントに関する判例
実際にカスタマーハラスメントで、法律違反として判決が下った例を紹介します。名古屋市の飲食店で、顧客側が「食あたりをした」と因縁をつけ金銭を脅し取ろうとした事件の判例です。
謝罪の食事券を受け取った上で、本来ならば保健所に伝えるべき内容であると前置きをしながら、新聞の購読代金を支払うよう飲食店側に強要しました。
被告が他にも複数の企業とトラブルを起こしていたことから、飲食店へのハラスメントも含めて次の2点が言い渡されています。
- 恐喝、暴力行為等処罰に関する法律違反
- 威力業務妨害
この事件は刑事事件として扱われ、被告2人にそれぞれ3年と1年10か月の懲役刑が下される結果となりました。
(参考:平成15年(わ)第2501号,第2707号,第3091号)
カスタマーハラスメントに法律的な対応をとる前に確認すべき3つのポイント
カスタマーハラスメントをスムーズに解決できるよう、法律的な対応の前に次のポイントを確認しておきましょう。
- 法律的な解決の他にできることはないか
- 関係が途絶えても対応するべきか
- カスタマーハラスメントの証拠は揃っているか
それぞれ詳しく紹介していきます。
1. 法律的な解決の他にできることはないか
法的措置に進む前に、カスタマーハラスメントに対して対応できることが残っていないか確認しましょう。本格的な裁判では、カスタマーハラスメントを解決するまでに費用や時間がかかります。
他にできる対応策を講じて解決したほうが、場合によっては企業への損害を最小限に抑えられるでしょう。例えば、弁護士を通じて警告文を送ることを検討してみてください。
必ずしも法律的に効力がある手段ではありませんが、ハラスメントへの抑止効果を期待できます。
2. 関係が途絶えても対応するべきか
カスタマーハラスメントをしてくる顧客は、法律的な対応により関係が途絶えても問題がない相手であるか考えてみてください。法律的な解決にまで発展した相手とはお互いの印象が悪くなり、顧客関係を継続できない可能性が高いためです。
その顧客に売上を依存していたり、他の取引先との関係を取り持ってもらっていたりすると、自社への経営的損害が生じるリスクがあります。顧客を失うことが企業にとってマイナスが大きい場合は、できる限り話し合いでの解決を目指しましょう。
3. カスタマーハラスメントの証拠は揃っているか
法的な対応に進む前に、カスタマーハラスメント被害の証拠が揃っているか確認することも大切です。弁護士や警察に相談しても、事実の裏付けがなければ対応してもらうことはできません。
相談前に次のような証拠を集め、カスタマーハラスメントの被害を客観的に証明しましょう。
- 防犯カメラの映像
- 通話記録
- 被害内容のメモ
どのような証拠であれば法律的な効力を持つのか分からない場合は、弁護士に相談してみることをおすすめします。
カスタマーハラスメントへ法律的な対応をする際の相談先3選
刑事事件、民事事件ともに、社内の人材だけで対応するのは大変なことです。カスタマーハラスメントを解決する可能性を高めるには、専門家に頼ることを検討しましょう。
おすすめの相談先は、主に以下の3つです。
- 弁護士
- 警察
- 中小企業庁の相談窓口
自分に合った相談先がないか確認し、問題解決に向けて動いてみてください。
1. 弁護士
弁護士は、民事事件として解決する上での手続きや、刑事事件で警察に提出する告訴状の作成などを対応しています。これらの手続きには法的な知識が必要となるため、社内の法務部だけでカスタマーハラスメントを解決するのは難しいです。
弁護士に頼れば、自社の担当者に法律的な知識がなくても最短ルートでの解決手段を目指せるでしょう。さらに顧問契約を結ぶと、研修の実施や対策マニュアルの整備などもサポートしてもらえます。
2. 警察
カスタマーハラスメントを、刑事事件として解決したいなら警察に相談しましょう。警察に告訴状を出すと捜査が始まり、必要性が認められれば起訴をして裁判などへ持ち込めます。
しかし告訴状の作成は手間がかかる上、法的な観点から根拠を示さなくてはなりません。そのため警察に相談する前に、弁護士にアドバイスを求めることも検討しましょう。
警察に相談すべきか判断が難しい事象の場合は、警察相談専用電話である「♯9110」を活用し、相談することもおすすめです。
3. 中小企業庁の相談窓口
中小企業庁では「下請かけこみ寺」で、中小企業同士の取引上のトラブルを解決できるようサポートしています。
相談員や弁護士に、無料で相談できることがメリットです。企業間取引で発注者からのカスタマーハラスメントに悩まされている場合は、ぜひ活用してみてください。
まとめ
カスタマーハラスメントを法律的な方法で解決することもできますが、社内で対処するのは困難な場合が多いでしょう。時間や手間がかかって担当社員の負担が大きくなったり、法的な知識が不足して適切な主張ができなかったりするためです。
効率的に法的な手続きを進めるなら、弁護士の力も借りながらカスタマーハラスメントに対応するのがおすすめです。
顧問弁護士がおらず、相談相手が見つからない時には「オンライン顧問弁護士」の利用をご検討ください。
Zoomを使って顔を合わせながら、カスタマーハラスメントを解決できるようサポートさせていただきます。30分間無料の顧問体験もありますので、まずはお気軽にご相談ください。