目次
法とは
憲法と法律の違い
まとめ
「法は守らなければならない」と子供の頃から、何となく教えられて来た方も多いと思います。しかし、そもそも法とは何でしょうか?「法とは○○である」と正確に答えられるでしょうか?また、憲法は何となく重要だということはわかっていても、他の法律とは何が違うのでしょうか?
そこで今回は、法とは何か、について解説します。
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法とは
結論から先に申し上げますと、法とは、「国家権力による強制力を伴う社会規範(ルール)」です。ここで、注意すべきは、①一定の価値観を伴うものであること、②但し、道徳とは違う。という特徴を有する点です。それぞれの特徴について説明します。
①一定の価値観を伴う
まず、法の特徴としては、①「一定の価値観を伴う」ということです。したがって、「場所」によっても違いが生じますし、「時代」によっても違いが生じます。
「場所」によって違いが生じる例としては、大麻が挙げられます。勿論、日本では大麻の所持、譲り受け及び譲り渡しは禁止されており、これに違反すると刑事罰が科されます。一方で、オランダやアメリカの一部の州では大麻は合法化されており、所持、譲り受け及び譲り渡しをしても刑事罰を科されることがありません。
これはまさに、行為は同じでも「場所」によって、それを罰するか否かの価値観が異なること、ひいては法律が異なることの一例です。
「時代」によって、違いが生じる例としては、例えば、姦通罪が挙げられます。姦通罪とは、妻が不倫した場合に妻とその不倫相手を懲役2年以下に処するという犯罪でした。この法律の驚くべき点は、夫が不倫した場合には適用が無いということです。男女平等が当然とされる現在では考えられない法律です。姦通罪は1947年まで実際に存在した犯罪です。
これはまさに、行為は同じでも「時代」によって、それを罰するか否かの価値観が異なること、ひいては法律が異なることの一例です。
②道徳とは違う
次に、法の特徴としては、②「道徳とは違う」ということです。
上記に述べた通り、法は一定の価値観を伴うものであり、この点は道徳と同じです。しかし、道徳と異なる点は、「国家権力による強制力を伴う」という点です。
例えば、電車内で高齢者や妊婦に席を譲ることはマナーであり、道徳です。しかし、仮にこれに違反したからといって刑罰を科されることはありません。また、目上の人や年上に対して、敬語を使うことはマナーであり、道徳です。しかし、仮にこれに違反したからと言って刑罰を科されることはありません。
一方で、電車内で高齢者や妊婦を突き飛ばした場合はどうでしょうか。これは暴行罪や傷害罪で罰せられます。また、目上の人や年上に対し、敬語を使わないだけではなく、不特定多数の前で侮辱した場合はどうでしょうか。これもその内容や状況によっては侮辱罪で罰せられる可能性があります。
このように、「道徳」は違反したからといって刑罰などの「国家権力による強制力」を行使されることはありません。一方で、「法」は違反することによって刑罰などの「国家権力による強制力」を行使されるのです。
憲法と法律の違い
憲法は民法などの法律よりも重要だということはわかっていても、憲法と法律の違いを正確に答えられる方は多くありません。憲法と法律は何が違うのでしょうか。憲法と法律の最も大きな違いは、「誰にルールを課すものか」という点です。
憲法は、「国にルールを課すもの」です。一方、法律は「国民にルールを課すもの」です。それぞれ具体例を用いて説明します。
憲法の具体例
まず、憲法の具体例です。
憲法19条は「思想及び良心の自由」を定めるものであり、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」とされています。したがって、例えば、国が江戸時代の踏み絵のような制度を用いて、国民の思想や良心を強制的に探ることは許されません。また、例えば、国が戦前戦時中の治安維持法のような法律を用いて、特定の思想を持っていることを理由に国民を逮捕することも許されません。
このように、憲法は「国にルールを課す」ことで、国民の自由を守る法なのです。
法律の具体例
一方、法律の具体例です。
刑法199条は「殺人罪」を定めるものであり、「人を殺した者は、死刑又は無期もしくは5年以上の懲役に処する。」とされています。これは具体例を挙げるまでもなく、文字通り、人を殺した者は「死刑又は無期もしくは5年以上の懲役」という刑罰に処せられる、というものです。
このように、刑法は、「国民にルールを課す」ことで、国民の自由や安全を守る法なのです。
以上の通り、憲法と法律は、「誰にルールを課すものか」という根本的な部分に違いあります。その他に、①憲法と法律では憲法の方が改正手続きは厳格であり、②憲法と法律が矛盾した場合には憲法が優先される、などの違いもありますが、これらは「誰にルールを課すものか」という根本的な違いから生じるものです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。何となく守らなければならないものと思っていた「法」について少しはイメージいただけたでしょうか。このほかにも、「一般法と特別法の違い」「実体法と手続法の違い」「民事事件と刑事事件の違い」「任意法規と強行法規の違い」などもあります。弁護士というと膨大な法律を暗記していると勘違いしている方もいらっしゃいます。しかし、現在、日本の法律はおよそ2000もあり、これに条例や省令なども加えると膨大な数になります。
当然、弁護士はその全てを覚えていませんし、見たことも聞いたこともない法律の方が圧倒的に多いです。しかし、前述の「法とは何か」「法に関する分類や考え方」などを駆使することで、初めて見る法律も一定程度理解することはできます。
このメルマガを見て「法」に少しでもご興味頂けた方がいれば、法律を暗記するのではなく、法に関する根本的な考え方を理解するようにして頂ければ、幸いです。