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民法改正 2021.03.02

法定利率改正とは?①

民法改正の中でも、実務への影響が大きい改正点の一つが、法定利率の変更です。
改正について押さえておきたい点は、①法定利率が5%から3%になったこと(改正民法404条1項、2項)、②商事法定利率の廃止、③法定利率が法定利率変動制になったこと(改正民法404条3項~5項)、④改正法の適用の基準日の4つです。
法定利率の改正後は、契約書の内容によっては経理業務が極めて煩雑になったり、損害賠償の請求において旧民法時代より不利になったりする恐れもあります。法定利率についての理解を深め、民法改正を機に自社に有利な方向を見極めて契約書の見直しを行うとよいでしょう。

今回は、2回に渡って法定利率改正について説明していきます。

約定利率と法定利率とは?

  • 約定利率
  • 法定利率

改正ポイント①:法定利率の変更

  • 法定利率は、「改正前5%」から「改正後3%」に!
  • 条文の変更点をチェック
  • 法定利率改正の理由は?

改正ポイント②:商事法定利率の廃止

  • 商事法定利率
  • 商事法定利率は廃止され、一律に法定利率3%が適用!
  • 条文の変更点をチェック

改正ポイント③:法定利率変動制の導入

  • 法定利率変動制とは?
  • 法定利率変動制のポイント
  • 条文の変更点をチェック

約定利率と法定利率とは?

法定利率の改正について検討するにあたって、まず、「約定利率」と「法定利率」の違いについて理解しましょう。

約定利率

約定利率とは?

約定利率(読み:やくじょうりりつ)とは、簡単に言い直すと、当事者間で特に利率について契約した場合に適用される利率のことです。
例えば、銀行預金につく利息は、銀行の取引約款で契約した利率によって発生する利息ですので「約定利率」に当たります。
ちなみに、2019年11月27日現在のメガバンクの普通預金の利息は、「年利0.001%」という超低利率になっています。

約定利率は何%?

約定利率は、原則的に、契約によって自由に決められます。
したがって、契約当事者が納得すれば、「年利0.001%」と決めてもいいし、「年利10%」と決めてもいいのです。
ただし、あまりにも高い利率を認めてしまうと公序を損ないかねませんので、利息制限法・出資法・特定商取引法などの各種規制法により、個別に利率の上限が決められている場合があります。これらの法律に違反していると、契約が無効になったり、過払い金を請求されたり、ともすれば刑事罰を受けることもあります(出資法5条2項、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方)。ですので、高い利率を合意する場合は十分注意が必要です。
例えば、昨今よくCMが流れている“過払金請求“は、サラ金などが利息制限法違反の利率でお金を貸していた問題に端を発しています(10万円未満の貸付の場合、年利20%が上限(利息制限法1条))。

法定利率

法定利率とは?

「法定利率」とは、「『利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないとき』(改正民法404条1項)適用される利率のこと」をいいます。

「法定利率」は、「約定利率」の逆と考えてもらえば分かりやすいです。つまり、簡単に言い直すと、当事者間で特に利率について契約をしなかった場合に、民法の規定によって勝手に適用される利率のことです。

 勝手に利率が適用される場面なんて想定できない!と思われるかもしれませんが、実は法定利率が使われる場面はたくさんあります。

 代表例が「損害賠償」の場面です。ケース1を見てみましょう。

ケース1 売買契約の代金が支払われない場合
<問題>
あなたは、Aさんに対して、工作機1台を100万円で売る売買契約を結びました。
あなたは、Aさんに対して、期限どおりに、工作機1台を納入しました。
しかし、Aさんは、期限になっても、代金100万円を支払ってくれません。
あなたは、見積書と発注書だけで取引してしまったので、契約書は作っていません。
あなたは、Aさんに対して、代金100万円とは別に、損害賠償としていくらか請求できるのでしょうか?
<回答>
あなたは、Aさんに対して、代金100万円のほかに、支払いが遅れた日数に「法定利率」を乗じて計算した利息も併せて請求することができます。
例えば、代金100万円の支払が30日間遅れた場合は、下記の計算のとおり2,466円分の損害賠償金を請求することが出来ます(民法419条1項)。
(代金100万円)×(年利3%)÷(365日)×(遅延30日)=約2,466円

法定利率は何%?

法定利率は、3%です。(2020年4月1日改正民法施行時点)
詳しくは、次項の改正ポイント①でお話しします。

改正ポイント①:法定利率の変更

法定利率は「改正前5%」から「改正後3%」に!

法定利率は、旧民法では年利5%とされていました。
しかし、改正民法では“とりあえず”3年間、法定利率は年利3%とすることに改められました。“とりあえず”というのは、今後は3年ごとに法定利率の見直しが行われる場合があるためです。

条文の変更点をチェック

新旧対照条文は以下のとおりになっています。

<旧民法>
第404条(法定利率)
利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。
 
<改正民法>
第404条(法定利率)
利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2 法定利率は、年三パーセントとする。

<コラム:法定利率改正の理由は?>
法定利率は、なんと明治29年(1896年)に制定された明治民法の時代から約120年間変わらず年利5%で維持され続けていたのです。
<明治民法(明治29年4月27日法律第89号)>
第四百四條 利息ヲ生スヘキ債權ニ附キ別段ノ意思表示ナキトキハ其利率ハ年五分トス
この年利5%という数字は、制定当時の市中金利を参考にしたものです。しかし、時代は変わり現在では基準割引率および基準貸付利率(≒旧「公定歩合」)は常に1%を下回るようになりました。
その結果、いくらなんでも法定利率が市中利率に比べ高すぎるという状態が生じてしまいました。そこで、民法改正に伴い、法定利率を年利3%に引き下げ、その後も市中利率の変動が大きい場合などは法定利率も併せて変動させることにしたのです。

改正ポイント②:商事法定利率の廃止

商事法定利率

「商事法定利率」とは、「『商行為によって生じた債務』(旧商法514条)について適用される法定利率のこと」をいいます。
商事法定利率は、年利6%でした。(旧商法514条)

『商行為によって生じた債務』といわれても分かりにくいですね。

簡単にいうと、会社(または個人事業主)の事業活動によって生じた債務はほぼ『商行為によって生じた債務』に当たります。例えば、上記ケース1のように会社が売った商品の代金の支払い債務は、『商行為によって生じた債務』です。

旧民法・商法下においては、“商売上手な商人は一般人に比べて高い金利でお金を回せるものだろう”というような考え方から、『商行為によって生じた債務』については特別にオマケを付けて、一般法定利率5%よりも高い、商事法定利率年利6%が適用されていました。

一律に法定利率年利3%が適用!

旧民法下では、個人の場合(=一般法定利率、改正前5%)と会社・事業者の場合(=商事法定利率、改正前6%)とで法定利率を区別してきました。

 しかし、市中金利が極めて低利率になる中、商事と民事を区別する理由も薄れてきたため改正を機に法定利率は、年利3%(民法404条2項)に1本化されることになりました

 これからは、利率に関しては、商人も一般人も同じ利率にしましょう、ということになったのです。

条文の変更点をチェック

それでは、民法改正に伴って消えてしまった旧商法514条を念のため確認しましょう。

<旧商法>
第514条(商事法定利率)
商行為によって生じた債務に関しては、法定利率は、年六分とする。
<改正商法>
削除。

<コラム:商人がお金を貸す・立て替える場合の“お助け条文”「商法513条」は残ります。>
(1)商人がお金を貸す場合の“お助け条文”「商法513条」とは?
ア お金の貸し借りにおける原則ルールは「利息なし」!
 意外に思われるかもしれませんが、個人間でお金の貸し借りをする場合、「約定利率」を発生させる契約を結んでいないと、利息は発生しないのが原則です。
つまり、「年利1%で貸すよ」「うん、わかった」というような約束をしていないと、返済期限前までの間の利息を請求できないのです(返済期限後は、約束がなくても遅延損害金として法定利率が付きます)。
 この点については、改正民法下でも変更ありません。
イ 法定利率が当然に適用されるのは、基本的には損害賠償の場合だけ!
 「法定利率3%は利率についての約束をしていない時に当然に適用されると言っていたのに話が違うじゃないか」と思われるかもしれません。
 しかし、実は、法律上は、利息の発生について、2段階の契約プロセスを要求しているのです。
 つまり
 1段階目:利息を発生させるという契約
  ➡法定利率は、フォローしてくれない。
➡遅延損害金の場合には、特別に民法419条(金銭債務の特則)がフォローしてくれて、利息が発生する。
 2段階目:1段階目の契約を前提にして、利率を何%にするかという契約
  ➡法定利率がフォローしてくれて、自動的に年利3%になる。
 したがって、1段階目の契約をしていない場合は、(遅延損害金の場合を除いて)法定利率が適用されることすらありません。
ウ 例外的に、商人間におけるお金の貸し借り・立て替えについては、利息支払いの合意(1段階目)がなくても商法513条がフォローしてくれます。
 民法改正に伴い、商事法定利率(2段階目)は廃止されましたが、商法513条(1段階目)は存続しました。
 したがって、2020年4月以降、商人間でなんの取り決めもなくお金を貸し借り・立て替えした場合には、商法513条により当然に利息の合意があったものとされ(1段階目)、改正民法404条2項により年利3%の利息が付くことになります(2段階目)。
(2)条文の変更点をチェック
 旧商法514条の削除に伴って、商法513条についてもほんの少しだけ条文の表現が変わっていますので、念のため確認しておきましょう。
<旧商法513条>
第513条 (利息請求権)
商人間において金銭の消費貸借をしたときは、貸主は、法定利息(次条の法定利率による利息をいう。以下同じ。)を請求することができる。
2 商人がその営業の範囲内において他人のために金銭の立替えをしたときは、その立替えの日以後の法定利息を請求することができる。

改正ポイント③:法定利率変動制の導入

法定利率変動制とは?

「法定利率変動制」とは、「法定利率が、3年ごとに、法令の基準に従って見直され、変動する可能性がある制度」のことをいいます。
これまでは、法定利率は約120年間利率が変わらない固定制が取られてきましたが、市場動向の変化への対応等を踏まえて、変動制が導入されました。

法定利率変動制のポイント

法定利率変動制の内容を正確に理解するのは、非常に難しいです。下記の要点をかいつまんで理解していただければ十分です。

変動時期:法定利率の見直しは、3年に1回。
➡次回の法定利率見直しのタイミングは、2023年(令和5年)です。
変動幅:法定利率の見直しが行われるのは、上下1%単位。

➡法定利率に、小数点以下の端数が出ることはありません。
変動し易さ:比較的変動しにくい定めになっています。

➡次期見直しの2023年に、実際に法定利率が変動される可能性は、高くはありません。

条文の変更点をチェック

非常にわかりにくい条文なので、正直に言って読む必要はないですが、念のため条文の変更点をチェックしておきましょう。

<旧民法>
第404条(法定利率)
利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。

<改正民法>
第404条(法定利率)
1~2(略)
前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。
前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の六年前の年の一月から前々年の十二月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が一年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を六十で除して計算した割合(その割合に〇・一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。

法定利率改正とは?②の記事に続きます。

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