
「何度電話しても『来月払う』とはぐらかされる」 「内容証明を送ったが、無視されたらどうする?」 「弁護士に頼むと費用倒れになる少額債権、泣き寝入りか?」
売掛金や貸金の未回収は、経営者や個人事業主にとっての死活問題です。 信じて待っていても、状況は好転しません。むしろ、時間が経つほど相手の資産は散逸し、回収不能リスクは高まります。
債権回収は「時間」との勝負です。 成功の鍵は、「正しい順番」で「最適な圧力」をかけることに尽きます。
本記事では、法的効力のある「内容証明郵便」から、最終手段である「強制執行(差し押さえ)」まで、債権回収の方法の全ステップを徹底解説します。 さらに、多くの人が悩む「自分でやるべきか、弁護士に頼むべきか」の損益分岐点も明確に提示します。
もう、一人で悩む必要はありません。あなたの状況に合った「最短で現金を回収するルート」を見つけ、今すぐ行動を開始してください。
債権回収の方法を解説!フローチャート診断

「いきなり裁判か? それとも話し合いか?」 債権回収方法に万能な手段はありません。相手方の態度や金額によって、戦術はガラリと変わります。
まずは以下のフローチャートで、あなたの置かれている状況と、選ぶべき「最適ルート」を即断してください。
Yes/Noで判定!状況別・推奨アクション診断
- 相手と連絡が取れるか?
- Yes → ②へ
- No(音信不通・夜逃げの懸念) → 内容証明郵便を送付し、住所確認とプレッシャーをかける。それでもダメなら公示送達を視野に入れた訴訟へ。夜逃げ対応はスピードが命です。
- 相手に支払う意思はあるか?
- Yes(でも金がない) → 民事調停や公正証書の作成で、無理のない分割払いを確約させる(債務名義化)。
- No(払いたくない・無視) → ③へ
- 債権額は60万円以下か?
- Yes → 少額訴訟(1日で結審するスピーディーな裁判)を検討。少額債権の回収方法として有効です。
- No → 支払督促または通常訴訟へ。
- 相手の財産(勤務先・口座)を知っているか?
- Yes → 勝訴後に強制執行(差し押さえ)で回収できる可能性大。
- No → 弁護士による弁護士会照会や、裁判所の財産開示手続が必要となり、ハードルが上がる。
回収のタイムリミット「時効」を確認せよ
どんなに正当な権利があっても、「時効」が来れば全て無駄になります。 2020年4月の民法改正により、債権の消滅時効は原則として以下に統一されました。
- 権利を行使できることを知った時から5年(主観的起算点)
- 権利を行使できる時から10年(客観的起算点)
ビジネス上の売掛金であれば、通常は「請求できると知っている」はずなので、「支払期日から5年」がリミットです。(※改正前の債権は旧法の短い時効が適用される場合があるため要注意)
もし時効が迫っているなら、悠長に話し合っている時間はありません。 「内容証明郵便の送付(完成猶予)」や「裁判上の請求(更新)」を行い、時計の針を止める手続きを最優先してください。
【ステップ1】自分で債権回収!「任意の交渉」とプレッシャーのかけ方

いきなり裁判所に行く前に、まずは自分でできる範囲で最大限の圧力をかけ、任意の支払を促します。 コストをかけずに回収するための、最初のステップです。
証拠の収集と整理(言った言わないを防ぐ)
交渉において最も重要なのは「証拠」です。相手に「そんな注文していない」「金額が違う」と言い逃れさせないよう、以下の資料を揃えてください。
- 基本契約書、発注書、請書
- 納品書、受領書(仕事が完了した証明)
- 請求書
- メール、LINE、チャットツールの履歴(「払います」という言質があれば強力な武器)
もし契約書がない場合は、相手との通話を「録音」するか、これまでの経緯と未払い額を確認する「債務承認弁済契約書」や「確認書」を新たに作成し、サインをもらうことを目指してください。 「分割でもいいから、サインしてくれれば待つ」と持ちかければ、応じるケースも多いです。
最強の督促状「内容証明郵便」の活用術
電話やメールを無視する相手には、「内容証明郵便」を送ります。 これは「いつ、誰が、誰に、どんな内容の手紙を出したか」を郵便局が証明するサービスです。
【内容証明の3つの効果】
- 心理的圧力: 「法的手段の準備に入った」という本気度が伝わり、支払の優先順位を上げさせる。
- 証拠能力: 「請求した事実」が公的に証明されるため、裁判での有力な証拠になる。
- 時効の完成猶予: 送付することで、時効の完成を6ヶ月間だけ一時停止(催告)できる。
【相手を動かす文面のポイント】 単なるお願いではなく、「期限内に支払わなければ、法的措置(訴訟・差し押さえ)に移行する」と明確に通告することが重要です。
文例: 「本書面到達後〇日以内に、下記口座へ振込指定でお振込みください。万が一、期限内にお支払いが確認できない場合は、誠に遺憾ながら、直ちに法的措置(訴訟提起、仮差押え等)を講じますので、ご承知おきください。」
さらに圧力を高めたい場合は、弁護士名義で内容証明を送るのが効果的です。数万円〜5万円程度の費用で作成してくれる事務所も多く、相手が「弁護士が出てきたならマズイ」と観念して支払ってくるケースも多々あります。
やってはいけない「違法な取り立て」
回収したい一心で、以下のような行為を取ると、逆に「恐喝罪」や「強要罪」、「業務妨害罪」に問われるリスクがあります。絶対に避けてください。
- 早朝・深夜の訪問や電話(社会通念上不適当な時間帯)
- 大声での督促、張り紙(近所や職場にバラす行為)
- 「殺すぞ」「家族に払わせるぞ」などの脅迫
- 退去を求められたのに居座る(不退去罪)
「ミイラ取りがミイラになる」ことだけは避けなければなりません。あくまで「法令の範囲内」で淡々と追い詰めるのが、プロの回収術です。
【ステップ2】裁判所を使った「法的手段」の選び方と手順

内容証明を送っても無視された場合、いよいよ裁判所の手続きを活用します。 「裁判」と聞くと大掛かりに聞こえますが、実は「書類審査だけで終わるもの」や「1日で終わるもの」など、状況に応じた使い分けが可能です。法人だけでなく、個人でも利用しやすい制度が整っています。
自分に合った手段を選び、強制的に回収への道筋を作りましょう。
支払督促(書類だけで完了する簡易裁判)
「相手は借金を認めているが、無視している」という場合に最適な、最も手軽な法的手段です。
- 概要: 裁判所に行かず、書類審査だけで裁判所書記官から相手に「支払え」という命令(督促)を出してもらう制度です。
- メリット:
- 手数料が通常訴訟の半額程度と安い。
- 審理(出廷)がないため、スピーディーに「仮執行宣言付支払督促」(差し押さえができる権利)を取得できる。
- デメリット:
- 相手が2週間以内に「異議申し立て」をすると、自動的に「通常訴訟」に移行してしまう。
- 向いているケース: 相手に争う意思がなく、単に支払を怠っている場合。
(参考:支払督促 | 裁判所)
少額訴訟(60万円以下・1日で結審)
「60万円以下の未払い金」を回収したい場合に使える、特別な訴訟手続きです。
- 概要: 原則として1回の審理(数時間程度)で、その日のうちに判決が出るスピード重視の裁判です。
- メリット:
- とにかく早い。何度も裁判所に通う必要がない。
- 証拠書類さえ揃っていれば、弁護士なしでも進めやすい。
- デメリット:
- 請求額の上限が60万円まで。
- 相手が「通常訴訟にしてくれ」と言えば移行してしまう。
- 判決に対する「控訴(不服申し立て)」ができない。
- 向いているケース: フリーランスの売掛債権回収や、個人間の貸し借りなど、少額だが明確な証拠がある場合。
(参考:少額訴訟 | 裁判所)
民事調停(話し合いでの解決)
「相手も払う気はあるが、一括では無理だと言っている」ような場合に有効です。
- 概要: 裁判官と調停委員が間に入り、お互いが納得できる解決策(分割払いの計画など)を探る手続きです。
- メリット:
- 非公開で行われるため、プライバシーが守られる。
- 合意した内容は「調書」に記載され、判決と同じ効力(差し押さえ可能)を持つ。
- デメリット:
- あくまで「話し合い」なので、相手が出席しなかったり、合意に至らなかったりすれば不成立となる。
- 向いているケース: 今後の取引関係も維持したい場合や、柔軟な支払条件で決着させたい場合。
通常訴訟(最終手段)
上記の方法が使えない場合や、相手が全面的に争う姿勢を見せている場合は、通常の裁判になります。
- 概要: 法廷で互いの主張と証拠を出し合い、裁判官に判決を下してもらう手続きです。
- メリット:
- 相手が異議を出しても逃げられない。
- 勝訴すれば、公的に債権の存在と金額が確定する。
- デメリット:
- 時間がかかる(半年〜1年以上かかることも)。
- 手続きが複雑で、弁護士に依頼しないと遂行が難しい(費用がかさむ)。
- 向いているケース: 請求額が大きく(140万円以上など)、争点が複雑で、徹底的に戦う必要がある場合。
【ステップ3】最後の切り札「強制執行(差し押さえ)」のリアル

裁判で「勝訴判決」や「仮執行宣言」を勝ち取っても、自動的にお金が振り込まれるわけではありません。 相手が支払わない場合、自ら裁判所に申し立てて「強制執行(差し押さえ)」を行う必要があります。
しかし、ここには「無い袖は振れない」という厳しい現実が待っています。
裁判に勝っても「無い袖は振れない」現実
強制執行を行うためには、債権者(あなた)が「何を差し押さえるか」を特定しなければなりません。 裁判所は「相手の財産を探してくれる」わけではないのです。
- 「相手の口座はどの銀行のどの支店か?」
- 「相手の勤務先はどこか?」
- 「相手名義の不動産はあるか?」
これらが分からなければ、差し押さえは空振りに終わります。これが「債権回収の最大の難所」です。
何を差し押さえるべきか?(預金・給与・売掛金)
差し押さえの対象として効果的なのは、主に以下の3つです。
- 預金(銀行口座)
- 最も一般的ですが、「銀行名と支店名」までの特定が必要です。差し押さえの瞬間に残高がなければ回収できません。
- 給与
- 相手が会社員の場合、勤務先を特定できれば最強の手段です。手取り給与の4分の1(上限あり)を、完済するまで毎月天引きできます。
- 売掛金
- 相手が事業者の場合、相手の取引先(売掛先)を差し押さえます。取引先からの信用を失うため、相手へのダメージは甚大です。
財産開示手続と第三者からの情報取得手続(法改正で強化)
「相手の財産がわからない」という債権者のために、2020年の民事執行法改正で制度が強化されました。
- 財産開示手続: 裁判所が相手を呼び出し、財産状況を陳述させる手続き。
- 罰則強化: 出頭しなかったり、嘘をついたりすると「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」という刑事罰が科されるようになり、無視されにくくなりました。
- 第三者からの情報取得手続: 裁判所を通じて、銀行や市町村、登記所から相手の財産情報を取得できる制度。
- 銀行へは「預金の有無」、市町村へは「勤務先情報(給与)」の照会が可能です(養育費など条件あり)。
これらの新制度をフル活用することで、以前よりも「逃げ得」を許さない環境が整いつつあります。
債権回収を弁護士に依頼するべき「損益分岐点」とメリット

「弁護士に頼めば確実だけど、費用が高い」 そう考えて検討している方も多いでしょう。ここでは、ビジネス視点での合理的な判断基準を提示します。
回収額の目安と弁護士費用の相場
弁護士費用は事務所によりますが、一般的な相場は以下の通りです。
- 相談料: 30分 5,000円(初回無料も多い)
- 着手金: 請求額の5〜8%(最低10万円〜など)
- 報酬金: 回収額の10〜16%
- 実費: 郵便代、印紙代など
「債権額が〇〇万円以下なら、弁護士に頼むと赤字になる可能性が高い」
ズバリ、「債権額が30万円〜50万円以下」の場合は、弁護士に依頼すると費用倒れ(回収額<弁護士費用)になる可能性が高いです。 このライン以下の場合は、「自分で内容証明を送る」「少額訴訟を利用する」などの自力救済が現実的な選択肢となります。
逆に、100万円を超える債権であれば、弁護士費用を差し引いても手元に残る金額は大きくなるため、依頼するメリットが大きくなります。
弁護士を入れる最大のメリットは「相手の本気度を変えること」
損得勘定だけでなく、以下のメリットも考慮すべきです。
- 相手へのプレッシャー: 「弁護士」という肩書きが出るだけで、相手は「逃げられない」「裁判になる」と観念し、支払の優先順位を上げます。
- 精神的負担の軽減: 相手との直接交渉や督促のストレスから完全に解放され、業務に集中できます。
- 完全成功報酬型の活用: 最近では、着手金無料・回収できた場合のみ報酬が発生する「完全成功報酬型」の法律事務所も増えています。初期リスクを抑えたい場合は、こうした事務所を探すのも一手です。
【番外編】債権回収会社(サービサー)への委託は可能か?
よく検索される「ニッテレ債権回収」「パルティール債権回収」「アビリオ債権回収」などはサービサーと呼ばれる債権回収会社です。
「プロに丸投げしたい」と思うかもしれませんが、サービサーへの委託には法律上の厳しい制限(サービサー法)があります。
- 対象債権: 金融機関等の貸付金など「特定金銭債権」に限られます。
- 一般企業の売掛金: 原則として取り扱えません(一部例外あり)。
したがって、一般的な売掛債権の回収方法としてサービサーを利用できるケースは限定的です。「債権回収会社の回収方法」は、主に金融機関向けのサービス、あるいは自分が請求された側の話であることが多いです。
二度と未回収を出さないための「予防策」と「与信管理」

今回の回収が終わったら、二度と同じ苦労をしないよう、予防策を講じましょう。 「入金があるまでが仕事」です。
契約書の見直しと「即決和解」条項
口約束や簡単な発注書だけでなく、しっかりとした契約書を作成しましょう。 特に重要なのは以下の条項です。
- 期限の利益喪失条項: 「一度でも支払が遅れたら、分割払いの権利を失い、即座に全額支払う」という取り決め。
- 遅延損害金: 支払が遅れた場合のペナルティ(年利14.6%など)。
また、高額な取引の場合は「強制執行認諾文言付き公正証書」を作成しておくと、裁判を経ずにいきなり差し押さえができるようになります。
危ない取引先の予兆(シグナル)を見逃さない
倒産や夜逃げ対応を迫られる前に、必ず前兆があります。不良債権化する前にリスクを回避しましょう。
- 支払いの遅延: 「経理担当者が休んでいる」「システムトラブル」などの言い訳が増える。
- 担当者の退職: 経理担当や営業担当が急に辞める。
- 小口の現金払い: 振込ではなく現金を要求してくる(口座凍結の可能性)。
- 連絡がつきにくい: 電話に出ない、折り返しが遅い。
これらのサインを感じたら、「取引額を縮小する」「現金前払いに切り替える」「早めに回収に動く」という防衛策を即座に実行してください。
まとめ:債権回収は「時間」との勝負。今すぐ最初の一手を

債権回収において、最大の敵は「相手」ではなく「あなたの迷い」です。 倒産後の債権回収や自己破産、相続放棄などは、非常に難易度が高く、回収不能になるケースがほとんどです。そうなる前に動くことが重要です。
「もう少し待ってあげようかな」 「裁判はおおげさかな」
そう迷っている間にも、相手の資金は底をつき、他の債権者に回収され、あなたの取り分は消えていきます。 感情を排し、ビジネスライクに淡々と手続きを進めることこそが、回収への最短ルートです。
【今すぐ取るべきアクション】
- 証拠を整理する: 契約書、請求書、メール履歴を集める。
- 内容証明を送る: 期限を切って、法的措置を予告する。
- 専門家に相談する: 自分で無理だと判断したら、すぐに弁護士を頼り、無料相談へ。
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