「M&Aってなに?」
「M&Aにメリット・デメリットを知りたい」
「M&Aに関する相談は誰にしたら良い?」
このようなお悩みを抱えていませんか?
M&Aは、事業を行っている方であれば、ぜひ知っておきたい内容です。M&Aを効果的に活用すれば、事業を拡大できたり経営課題を解決できたりします。
そこでこの記事では、M&Aについて
- 概要
- メリット・デメリット
- 手続きの流れ
などを解説します。
当コラムを読むことで、M&Aの基本的な知識から実践的な内容まで理解できます。ぜひご一読ください。
M&Aとは?概要や国内の推移を解説
こちらでは、M&Aの基礎知識を解説します。
- M&Aの概要
- M&A件数の推移
具体的なデータも提示しながら説明するので、ぜひ参考にしてみてください。
1. M&Aの概要
M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略称です。
直訳すると、合併と買収です。2つ以上の会社が1つになったり、他の会社を買ったりすることを指します。
M&Aは、企業の成長戦略の手段として行われることが多いです。M&Aを行うことで、ビジネスを短期間で拡大できたり、事業存続の問題が解決できたりします。
2. M&A件数の推移
(出典:グラフで見るM&A動向|レコフデータ)
日本国内のM&Aの推移は、全体的に見ると右肩上がりの傾向にあります。
M&Aが増加している主な要因は、以下の2点です。
- 国内市場の成熟化
- オーナー経営者の高齢化
人口が減少傾向にあることから、規模の限られた市場の中で他社と競合する機会が増えてきました。分かりやすい例が小売市場です。例えば2008年にはファミリーマートがam/pmを、2018年にはローソンがスリーエフをそれぞれ買収しています。
また中小企業庁は、引退の目安とされる75歳を超える中小企業の経営者は、2025年には245万人を超えると予想しています。さらに、このなかの半数以上は後継者が定まりにくいと想定されているのです。このような状況が影響し、M&Aの実施は増加しています。
【買い手企業側】M&Aのメリット・デメリット
M&Aのメリット・デメリットは、買い手企業と売り手企業に分けられます。
こちらでは、買い手企業のメリット・デメリットを解説します。企業の買収や合併を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
1. M&Aのメリット
買い手企業側のM&Aのメリットは、以下の3点です。
- ビジネスを短期間で拡大できる
- 事業を多方面に展開できる
- 技術力の補強・強化に繋がる
順番に見ていきましょう。
1. ビジネスを短期間で拡大できる
M&Aの買い手企業側のメリットは、ビジネスを短期間で拡大できることです。買収対象となる企業が保有する資産を取り込めるためです。
例えば、
- 不動産
- 設備
- 人材
- ノウハウ
- 流通網
- 顧客基盤
などが挙げられます。
これらの資産を1から形成するとなると、多大な時間や労力がかかってしまいます。
一方、M&Aを効果的に行うことで、短い期間で事業拡大に必要な資産を手に入れられるのです。事業規模の拡大は、利益の増大や知名度の向上などの利益をもたらします。
2. 事業を多方面に展開できる
M&Aには、事業を多方面に展開できるメリットがあります。買収する企業が行っていた事業を自社で展開できるためです。
例えば、2018年には味の素株式会社がトルコにある2社の食品会社を買収しました。これにより、東南アジア向けの商品開発・販路拡大に役立っています。
このように、M&Aには事業を多方面に展開できるメリットがあります。
3. 技術力の補強・強化に繋がる
M&Aは、技術力の補強・強化に繋がると見込まれています。
例えば、2004年には楽天株式会社は、マイトリップ・ネット株式会社を完全子会社化しました。マイトリップ・ネット株式会社は、インターネット宿泊予約サイト「旅の窓口」を運営していた企業です。結果、楽天株式会社はすでに運営していた自社サイト「楽天トラベル」の強化に成功したのです。
M&Aには、自社の弱点を補強したり、強みを伸ばせたりする可能性があります。
2. M&Aのデメリット
M&Aのデメリットは、以下の3点です。
- 想定した効果が望めない可能性がある
- 債務を引き継ぐケースがある
- 統合が上手くいかない場合がある
それぞれのデメリットについて、順番に解説します。
1. 想定した効果が望めない可能性がある
M&Aを行っても、想定した効果が望めない可能性があります。企業を買収したからといって、必ずしもプラスに働くわけではありません。
例えば、M&Aを行い新規事業に踏み出しても、利益をあげられないケースも珍しくないでしょう。さらに、商品・サービスなどの管理コストが余計にかかるリスクも考えられます。
M&Aを行ったことで、マイナスに働く可能性があることを理解しておきましょう。
2. 債務を引き継ぐケースがある
M&Aを行うことで、買収先の債務を引き継ぐ可能性があります。例えば、簿外債務や偶発債務などがあげられます。
簿外債務とは、貸借対照表に記載されていない債務です。賞与引当金や退職給付引当金といった、回収見込みの低い売掛金を指します。
一方で偶発債務は、今債務保証や取引先との訴訟、環境汚染など後発生する可能性のある債務のことです。
これらの債務は、M&Aを行ったあとに発覚する可能性があります。そのため、契約を締結する前に、見落としている負債がないか確認することが大切です。
3. 統合が上手くいかない場合がある
M&Aで企業を統合した後、経営が上手くいかない場合が考えられます。特に注意したいのが、従業員のモチベーション低下です。
M&Aは、業務内容や働き方など、小さなルールの変化が起こります。このような変化を受け入れられない従業員は、働く意欲がわきにくいものです。
結果、業績の悪化や離職者の増加などに繋がる可能性があります。M&Aは必ずしも上手く行くわけではないことを、認識しておきましょう。
【売り手企業側】M&Aのメリット・デメリット
こちらでは、M&Aの売り手企業側のメリット・デメリットを解説します。
「会社をたたもうか迷っている」「事業が伸び悩んでいる」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
1. M&Aのメリット
M&Aにおける売り手企業側のメリットは、以下の3点です。
- 後継者不在問題を解決できる
- 事業の拡大に繋がる
- 売却益が得られる
順番に解説します。
1. 後継者不在問題を解決できる
M&Aの大きなメリットは、後継者不在問題の解決に繋がることです。
特に、中小企業は後継者不足が課題となっています。日本政策金融公庫総合研究所は、日本の約50%の中小企業が廃業を検討しており、その内の約30%が「後継者不足が理由」と発表しています。
後継者を選ぶ際は、自社の役員や親族から見つけることが考えられます。しかし「経営者に向いていない」「事業継承の意志がない」など、後継者がなかなか見つからないケースも珍しくありません。
そこでM&Aを行うことにより、後継者不在が原因で事業をたたむ必要がなくなります。
2. 事業の拡大に繋がる
M&Aは、売り手企業側の事業拡大に繋がります。買い手企業側の強みが加わることで、自社だけでは見込めなかった成果をあげられるためです。
例えば、2012年には、株式会社NTTドコモはタワーレコード株式会社を子会社化しました。タワーレコード株式会社は、株式会社ドコモのインフラ・スマートフォン事業の強みを活かし、インターネット上でCD・DVDなどを販売するコマース事業への進出を加速させたのです。
このように、M&Aは事業を拡大させるというメリットがあります。
3. 売却益が得られる
M&Aにより会社を売却すると、売却益が得られます。価格の決定は、自社が上場株式か非上場株式かによって異なります。
非上場株式の場合、買い手と売り手の経営者の話し合いで金額が決まるケースが多いです。売り手の経営者が、実質のオーナーであることがほとんどだからです。
一方、上場企業の場合は、売り手の経営者と株主によって決まります。そのため経営者が買い手の金額に同意しても、株主が賛同しなければ買収はできません。上場企業が会社を売却する際には、株主が納得する金額を提示する必要があります。
2. M&Aのデメリット
売り手企業側のM&Aのデメリットは、以下の3点です。
- 希望の売却先が見つからない可能性がある
- 経営者の権限が小さくなる
- 取引先との関係が悪化する
順番に見ていきましょう。
1. 希望の売却先が見つからない可能性がある
自社がM&Aを望んでいても、希望の売却先が見つからない可能性があります。
M&Aは、買い手と売り手の双方の合意が必要になるためです。買収を希望している企業が現れたとしても、相手方が提示した条件と折り合いがつかない可能性があります。
売却先を見つける際には、弁護士や金融機関などへの相談を検討してみてください。アドバイスをしてくれたり、仲介役になってくれたりして、自力で探すよりも希望の相手が見つかりやすくなります。
2. 経営者の権限が小さくなる
M&Aを行うことで、売り手企業側の経営者の権限が小さくなります。売却した企業は、買い手側企業の方針に従う必要があるためです。
例えば、権限が小さくなることで、予算配分や社内人事などを自社の意志だけで決めるのは難しくなります。何かを決定するには、買い手側企業の同意が必要になるケースがほとんどです。
M&Aを行った後も自社の影響力を残したい場合は、契約が成立する前に交渉しておくことが大切です。
3. 取引先との関係が悪化する
M&Aを行うことで、取引先との関係が悪化する可能性があります。取引先との契約内容に、大幅な修正が必要になることがあるためです。
内容によっては反発が起こったり、取引契約を打ち切られたりする危険性があります。
取引先との関係を保ちたい場合は、売却する経緯や契約内容の変更などを、取引先に納得してもらえるよう説明することが大切です。
M&Aの手続きの流れ
M&Aの手続きは、主に以下の3ステップを踏みます。
- M&Aの検討・準備
- 相手方とのマッチング・交渉
- 最終契約
順番に見ていきましょう。
1. 検討・準備
まずは、M&Aの検討と準備を行います。
このフェーズでは「M&Aが自社にとって本当に必要なのかを」考えることが大切です。会社を買収・売却するには、メリットだけでなくデメリットがあるためです。例えば、事業承継が課題となっている場合、親族内承継と比較してもM&Aを選ぶ理由があるのかを考えましょう。
M&Aの準備は、自社の経営状況や純資産、負債などの正確な状況把握を行います。例えば、特許や独自ノウハウなどを洗い出しておくと、交渉時に有利に働く可能性があります。
2. 相手方とのマッチング・交渉
M&Aの検討・準備が終われば、相手方とのマッチング・契約に入ります。
このフェーズで最初に必要なのが、ノンネームシートの作成です。ノンネームシートとは、企業の概要を会社名が特定されない程度の匿名された内容でまとめた資料です。この資料を元に、交渉相手の選定を行います。
交渉相手がある程度絞れれば、ノンネームシートよりも詳細な会社概要や財務状況、強みなどをまとめた企業概要書が開示されます。企業概要書の内容を加味した上で、M&Aの交渉を進めるかどうかを判断するのです。
交渉を進める企業が決定したあとは、基本合意書を取り交わします。M&Aを締結する上での条件を整理し、譲渡価格やスケジュールなどを定めます。
3. 最終契約
相手方とのマッチング・交渉の後は、最終契約を行います。
このフェーズで決める内容は、以下の通りです。
- 取引金額
- 表明保証
- 補償条項
- 解除条件
最終契約には、法的拘束力があるため十分に契約内容を確かめることが大切です。例えば、なんらかの理由でM&Aの解約の申出があった場合、相手方に損害賠償の請求が可能です。
最終契約にもとづき、経営権を移転するクロージングを行います。このクロージングもって、M&A契約が成約します。
M&Aに関する相談先3選
M&Aを行う際、自社では決めきれないこともあると思います。しかし、誰に相談すればいいのか分からない方も多いのではないでしょうか。
こちらでは、M&Aに関する相談先を紹介します。主に、以下の3点です。
- 弁護士
- 仲介業者
- 商工会議所
順番にみていきましょう。
1. 弁護士
M&Aを行うには、基本合意書や最終契約書などさまざまな書類が必要になります。弁護士には、これらの書類の作成・確認を依頼できます。
内容に不備があると後々トラブルに発展する可能性があるため、法律の知識を持った弁護士に依頼するのが好ましいです。万が一問題が起こった場合でも、法的知識や過去の判例を踏まえて早期の解決が望めます。
なお、弁護士によって得意分野は異なります。そのため、依頼する際は、M&Aに知見のある弁護士を選びましょう。
2. 仲介業者
仲介業者は、M&Aに関する業務を専門的に行っている会社です。
具体的な会社名を挙げると、
- M&Aキャピタルパートナーズ
- M&A総合研究所
- 日本M&Aセンター
- M&Aネットワークス
などがあります。
仲介業者に相談するメリットは、幅広い相手からM&Aの相手候補先を探してもらえることです。そのため、希望にあった買収・売却先が見つかる可能性が高まります。
3. 商工会議所
商工会議所の強みは、中小企業に関する業務経験が豊富であることです。そのため、中小企業の立ち場を考慮した、M&Aに関するアドバイスが望めます。
さらに相談することで、自治体が運営している公的窓口「事業承継・引継ぎ支援センター」に繋げてもらうケースがあります。事業承継・引継ぎ支援センターは、主に第三者・親族内継承の相談から成約にいたるまでをサポートしている機関です。
M&Aのお悩みなら「オンライン顧問弁護士」へご相談ください
M&Aは、2つ以上の会社が1つになったり、他の会社を買ったりすることです。主に、企業の成長戦略の1つとして行われます。
M&Aには、売り手・買い手企業側どちらにもメリット・デメリットがあります。会社を買収したり、売却したりすることには、良い面だけではないことを覚えておきましょう。
なお、M&Aを行う際は、慎重に手続きを踏まなければなりません。特に、相手方との契約内容によっては、自社が不利益を被る危険性があるため注意が必要です。
オンライン顧問弁護士は、オンラインを通じて、全国どこからでもM&Aに知見のある弁護士へご相談いただけます。「条件に合う買収・売却先が見つからない」「契約書に不備がないか確認して欲しい」などのお悩みを抱えている方は、お気軽にお問い合わせください。